祈った…4位指名

 【10月11日】

 残っててくれてありがとう。森木大智である。藤川球児が育った阪神が高知の剛腕をよそにもっていかれるわけにはいかない。取材そして、理屈抜きにそう思っていたので、感謝、感謝である。

 矢野燿大は嬉しそうだった。そして、球団副社長の谷本修も…。

 一昨年までなら矢野、谷本ら阪神の編成チームと同じ会場でギリギリまで同じ空気を吸いながらその時を待つことができた。コロナ禍の昨年から、ある意味では〈自由競争〉が困難になった。でも、だからといって「規制内でやります」と優等生ぶってると、他社に置いていかれるのがこの世界だ。

 この日のスポーツ紙「阪神1位(第1巡選択希望選手)」の予想は割れた。球団が「公表しない」というスタンスをとれば、それこそ、各社の「取材力」の勝負になる。隅田知一郎、小園健太、森木大智。各紙1位予想で登場したのがこの3投手だったわけだけど、正解は小園。森木はいわゆる「外れ1位」になるわけだけど(この言い方、どうも好きになれないけれど)、高卒スター選手でいえば坂本勇人が「外れ1位」だし、山田哲人は「外れ外れ1位」。10年経てば、外れてくれて、残っててくれて、ありがとうである。

 取材の限り、今年、阪神球団は年始からドラフト当日までスカウト会議を計「9回」行い、運命の日を迎えた。編成部門が人事を尽くし天命を待つ。それがドラフトだから、今回も運命の糸に導かれた精鋭が猛虎の一員になるわけだけど、これまで当欄で書いているように、ドラフトの成否が分かるのは5年後、10年後である。「残っててくれてありがとう」。森木大智…数年後きっとそう振り返るドラ1だと思いたい。

 今だから明かすけれど、僕が番記者としてドラフトを取材していた頃は、指名がすべて終わってから阪神の要職に就く人物と一通り会話をしてからPCに向かっていた。つまり、答え合わせだ。ただし、原稿の締め切り時間に追われるため、指名が完了して確かめたのは、下位指名のイキサツだ。

 「○○くんは残っていて欲しかった…」。そんな類の愚痴もよく聞いたもの。例えば一年前なら、中野拓夢の6位指名に「成功」した谷本修はこう語っていた。

 「センターラインの強化に資する社会人ナンバーワン内野手という意味で、必ず獲りたかった。残っててくれて『やった!』です」

 そして、そして、今年は個人的に叫びたい。残っててくれてありがとう。4位指名の前川右京は、家族ぐるみで付き合いのある選手(智弁捕手・安藤壮央)のチームメートであり親友である。高校No.1スラッガーは上位で消える。そう予測していたので嬉しい限り。

 この夜、谷本修は祈っていた。「(前川を4位指名できたのは)デカい」と感じていた。そして…

 「4位か。春(センバツ)よりバットコントロールが柔らかくなって良くなっているよ」

 今春、前川にアドバイスを送った金本知憲も嬉しそうだった。ドラ4の先輩として…。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス