どらドラの奇跡

 【7月20日】

 ドラえもんが降臨したのか…今となってはそんなジョークも言えるけれど、一時は腹立たしさ、やるせなさで気持ちのやり場が見つからなかった。とにもかくにも、いい知らせが届いて良かった。

 できれば、鳥取へ飛んでゆきたい。先約の取材が入って叶わないけれど、いま一番待ち遠しいプレーボールがきょう米子でかかることになった。すみやかに決断くださった鳥取県の高野連の方々、今回尽力くださったすべての方々に部外者ながらお礼を言いたい気持ちでいっぱいである。

 米子松蔭高の学校関係者の一人が新型コロナウイルスに感染したとして、鳥取県高野連のガイドラインに則した形で同校野球部が第103回全国高校野球選手権鳥取大会の出場を辞退する一報が流れたのは16日夜のこと。その後、同校野球部関係者は抗原検査を実施し、全員の陰性が確認された。濃厚接触者も0だった。にもかかわらず、保健所の判断などに沿って出場辞退を余儀なくされた同校は17日の第1試合で境高校と対戦予定だったが、不戦敗。松蔭ナインは号泣したと聞いた。

 「僕たちは夏の大会に向けて、甲子園目指して必死に練習してきました。部員から陽性者は出ていません。校長先生含め学校は最後の最後まで出場できる道を探してくれました。試合もできずに、このまま終わってしまうのはあまりにも辛いです。何とか出場する道を模索していただけませんか?」

 これは米子松蔭野球部・西村虎之助キャプテンが17日に綴ったツイートである。このSOSに「わかりました。試合が再調整されるよう、各方面に働きかけます」と即座に反応したのが伊木たかし米子市長。僕は同市長の呟きに「いいね」し「どうかお願いいたします」とツイートさせてもらった。

 西村キャプテンのツイートには6・4万件の「いいね」が集まり世論が動いた。各界の著名人、政治家らが次々に声をあげ、おそらく水面下で大きなものが動いたのだろう。19日に鳥取県高野連が不戦敗の取り消しを発表したのだ。

 ただただ科学的な判断をしてもらいたい。僕はそう願ってツイートしたわけだけど、経過がどうあれ、何の罪もない球児の夢が潰されずに済んだことは何よりだ。

 ただし、この問題は「以上、終わり」では済まない。悪夢のような事例を教訓にしてほしいし、日本高野連が作成した地方大会のガイドラインに不備があったとすれば、どう改めるべきか。統一ルールが設けられなかったことは各都道府県によって感染者の状況が異なるからだと察するし、コロナ禍の対応は想定が困難であることも想像がつく。だからこそ、準備に時間をかけてほしい。しかるべきオトナたちが議論を尽くさなければ同じ〈過ち〉は繰り返される。

 鳥取大会が開催される「どらやきドラマチックパーク米子」は、どら焼き生産量日本一を誇る「丸京製菓」がネーミングライツを取得した球場である。不思議なポッケで叶えてくれた(?)奇跡にひとまず、ありがとう。=敬称略=

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