ギャロだっていいじゃない

 【7月13日】

 メジャーリーグのホームランダービーをテレビで観戦した。NHKの生中継を最初から全て見たけれど、「さあ打て」と投げてくれるボールをスタンドまで運ぶ競争にあれこれ思うところがあった。

 シーズン中、容易くフェンスオーバーしていた(ように見えた)大谷翔平がやはりスペシャルな舞台で力んだのか、思うようにビッグフライを打てない。引っ張り込んで低弾道…ミスショットでライトへのゴロになる様を見るにつけ野球とはメンタルの競技だとあらためて感じたのだ。

 第1Rで姿を消した大谷は「楽しかった」と笑顔で振り返っていたが、おそらく打席では実は「楽しめなかった」のではないか。いっぽう、連覇したメッツのP・アロンソは前回(19年)制した余裕からか、スタジアムに流れるBGMを口ずさみながら、夢のダービーを楽しんでいるように見えた。

 花巻東の先輩にあたるマリナーズ菊池雄星から〈力水〉を手渡されていた大谷だけど、極端なハナシ、この〈競争〉を何のプレッシャーもなく、母校のグラウンドなんかで楽しみながら打ったらどうだったか。きっとミスショットなんて1球もなく、全球場外弾を放ったのでは?そんなことを妄想すれば、思うようにいかない「人間大谷」を見られてホッとした…これが正直な僕の感想である。

 ホームランは野球の華。ホームランを拝むために球場へ足を運ぶファンも沢山いる。そういう意味でおもしろい選手がレンジャーズのジョーイ・ギャロだ。今回のホームランダービーにも参加したこの男は、メジャーで単打通算100本よりも先に100本塁打に到達した史上初の選手。つまり、彼にとってホームランはシングルヒットを打つより簡単なもの…という見方もできる。低打率でも華のあるバッターは魅力的だ。

 この日、日本の球宴、そのホームラン競争に佐藤輝明が出場することが決まった。こんなこと書いちゃ「無責任」だと怒られるかもしれないけれど、1年目の輝はギャロでいいじゃないか…と考えたりもする。ルーキーにして前半で20本塁打を打てるポテンシャルをこの先どれだけ伸ばせるか。

 優勝を目指す以上、佐藤だって結果が出なければベンチ?そんな見解もよく分かるんだけど、怪物くんの本塁打がどんどん増える環境こそ前半戦の快進撃を支えてきたと捉えるのは間違いだろうか。

矢野阪神には、佐藤が本塁打を量産できる環境が既にあるのだからきっと水が合っている。

 七回に飛び出した佐藤のタイムリーは、彼にとって今季82本目の安打となった。

 ちなみに内訳は…単打=42本、二塁打=20本、本塁打20本。

 ホームラン競争で弾みをつけてもらって、シーズンの後半戦で単打と本塁打の差が縮まったっていい。そんなバッターが阪神にいるのもおもしろいと、僕は思う。

 きょう前半戦ラストゲームで輝の21号を期待したい。厳しい戦いを楽しめる環境…矢野燿大が掲げる「あり方」だ。=敬称略=

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