決して天命ではない

 【7月1日】

 ノムさんって小難しいことばっかり言ってたなぁ…。知将・野村克也にまつわる記憶は各々によって異なるし、そう語る選手だっている。全ての教え子が良き思い出として懐かしむわけではない。

 「僕、野村さんに嫌われてましたから」-そう語る選手…いや、名前を挙げると、今回の〈追悼シリーズ〉に水をさしかねないので控えるが、いわゆる「ノムラの考え」についていけなかった選手がいたことも知る。しかし、そんな選手も後に「なるほど」と、リスペクトすることも少なくない。

 負けまじき軍に負け、

 亡ぶまじき家の亡ぶるを、

 人みな天命という。

 それがしに於いては天命とは思わず、みな仕様の悪しきが故と思うなり

 この類がアレルギーの方は「うぅぅ…」となる。僕もその口だから、あまり知ったかぶりで書きたくないけれど、これは、その、有名なアレだ。

 〈戦(いくさ)に負けるのも家が亡ぶのも、決して天命なのではない。やり方が間違っていたからだ-信玄はそういっているのである。だから、負けたときは不運だとか天命だとかいってあきらめたり、負け惜しみを口にしたりするべきではない。負けには必ず原因があるのだから、嘆いたり、悲しんだり、なぐさめ合ったりしている暇があるのなら敗因を徹底的に分析し、対策を練るべきなのだ〉

 このくだりは『野村克也人生語録』(講談社)におさめられる。

同著書で、続けてノムさんは13年3月に開催されたWBC準決勝のハナシを持ち出す。

 〈日本はダブルスチールの失敗が響き、三連覇を逃すことになったのを覚えているだろうか〉

 覚えている。

 僕はこの試合を現地サンフランシスコAT&Tパーク(当時)で金本知憲とともに観戦していた。

 内川聖一がフィールドでうなだれるシーンは忘れられないが、ノムさんは、この1シーンだけでも山のようにあるチェックポイントを検証すること、また、原因をつきとめれば同じ轍を踏む確率は格段に低くなると語る。

 勝ちに不思議の勝ちあり

 負けに不思議の負けなし-。

 この夜の虎である。同点の九回表にそれまで両軍一つもなかった四球が、このイニングだけで2つ出てしまった。負けるべくして…そう言われりゃそう。ノムラ流に書けば、この九回だけでもチェックポイントはいくつかある。ただR・スアレスだって神じゃない。こんな夜もあるじゃない。

 確かに、無四球ゲームを期待していた。それに…この日のヤクルト戦は、今季33試合目となる「無失策ゲーム」だったから余計に。

 折り返しの72試合目に、この数字はしっかり抑えておく。

 (1)阪神=50(2)ヤクルト=42(3)DeNA=39(4)広島=38(5)中日=30(6)巨人=28

 失策の多い順に並べれば、巨人がセ・リーグ最少。負けるべくして-の試合を最小限におさえるチームは手ごわい。=敬称略=

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