選手に嫌われたくない
【6月30日】
野村克也追悼試合で『野村ノート』(小学館)について書いた。きのうのことだ。名言「エースと4番は育てられない」に触れ、思うところを書いた。当欄はきょうもノムさんを追悼してみる。
〈ヤクルトと阪神では選手の質が明らかに異なった。能力ではない。環境が与えた選手の自覚、いわば精神年齢といったらいいのだろうか。ヤクルトが大人なら阪神は子供、それくらい阪神の選手は甘え体質だった〉
『野村ノート』にそうある。
これはもちろん、3年連続最下位に沈んだ「野村阪神」時代の回想である。
99年~01年だから、20年ほど前のハナシだけど、当時の選手からすれば、「子供」とは、えらい言われようだ。
〈誰が甘やかすのかといえば、まずファン、タニマチ、そして在阪のスポーツ新聞である〉
僕は「野村阪神」の体質をよく知らない。だから「甘え体質」と書かれても、実はそれほどピンとこないのだけど、こう書かれたらドキッとする。阪神が勝てなかったのは我々も要因…「悪」だと。
きのう当欄で大山悠輔について書かせてもらった。2試合続けて6番を打つ彼だけど…苦しむなら4番で苦しんでほしいと書いた。
つまり、僕の希望は「大山を不動の4番で…」。これをノムさんが読めば、どう思うか。
これも、甘やかし…となるのかどうか。
〈大阪のマスコミでは、阪神が負けると、悪いのは監督とフロントという論調になる〉
〈巨人=読売新聞、中日=中日新聞と特定のメディアをもたない阪神では、どのテレビ局も新聞社も阪神が一番の人気ソフト=商品である。(中略)そういった事情から、あまり選手に嫌われたくないというのが本音にあるようだ〉
ブレないデイリースポーツとはいえ、タイガースとデイリースポーツに「親・子」の関係はない。
例えば、前述の件は「大山に嫌われたくないから」書いている話ではないし、こんなこと書けば嫌われるか…そう思いながら書くことも、正直ある。でも、だからといって書かない選択肢はない。
「風さんがこうだと思ったことを誰に遠慮することなく書いてください」。5年前、当欄をスタートするにあたり福留孝介からもらった激励を今も忘れずにいる。
ノムさんの言葉に少し頷くことがあるとすれば、外様の選手から何度か聞いた「他のチームに比べて阪神の選手は練習をしない」という証言を耳にしたとき。20年前が仮にそうだったとしても、今はそうではないことを伝えられる。 そこはもちろん取材が鉄則になるけれど、大山が不振であれば、それは大山の責任であり、監督やフロントが悪いわけではない。
そんなこと本人が誰よりも分かっていることであり…というか、におう。この日の1本から大山悠輔は上がる。嫌われたくないから書くのか?甘やかしか??いや、彼が「大人の」選手であることを知るからそう感じる。=敬称略=