独断「4月のヒーロー」は…
【4月30日】
心地よい4月が終わった。両リーグ20勝一番乗りで貯金11。首位で新しい月を迎えると、取材する側も何だか気が引き締まる。4月終了時に貯金が2ケタあったのは長い球団史で3度目である。
過去2度は1976年と2008年。いずれも2位に終わっているけれど、ネガティブな捉え方はするまい。ここまでの戦いぶりは85年より、03年より、05年よりも逞しいのだ。誰一人慢心するわけもなく、その自信を携えて5月戦線に臨めるのは幸せだと考える。
秋山拓巳の好投でカープを寄り切った無観客の夜である。その制球力を「精密機械」と書き続ける当欄だから、3ボール(初回の一度のみ)になるだけで「あれ?」とつぶやく贅沢な観戦。球数を数えながら、あっという間に終盤を迎え、8回途中から盤石のリリーフ陣。これじゃ、あの男の出番はないか…と、きょう書きたかった「4月のヒーロー」を思う。
阪神首位の立役者は?
一人だけ挙げれば?
そう問えば、虎党は誰の名を呼ぶだろうか。「一人は無理や」-が大方のアンサーか。それとも、やっぱりあの男を推すのか。
4月のデイリースポーツ(最終版)を振り返ってみた。
誰が一番多く「1面」を飾ったと思いますか?そうです。あの男がダントツでした。
1位=佐藤輝明(13回)
2位=藤浪晋太郎(3回)
3位=矢野燿大(2回)、大山悠輔(2回)、近本光司(2回)
梅野、陽川、山本、伊藤将、中野、ロハス&アルカンタラ、マルテ、チェンが各1回。
本塁打の新人記録更新はならなかったけれど、4月のデイリーが「輝祭り」だったことがよく分かる。ただ、僕が個人的に「4月のヒーロー」を一人指名させてもらえるならば、この夜、出番のなかった28歳右腕を挙げる。
阪神のブルペンを支える小林慶祐である。今季10試合登板で防御率0・00。ここまで29試合、彼抜きに快進撃を語れないことは、誰も異論がないと思う。
阪神が飯田優也との交換トレードでオリックス小林を獲得した経緯について少し触れたい。
取材の限り、このトレードは、阪神がオリックスに打診したものである。中継ぎ左腕(=飯田)を欲するであろうオリックスに阪神側が声掛けし、スピードボールと縦変化を持つ小林を欲した。同トレードがテーブルに乗った際、飯田はファームで好調を維持しており、複数の阪神球団関係者によれば、双方「ウィン・ウィン」の形を望み、実現したものだったという。更に付け加えるならば、小林獲得のビッグヒットは球団本部部長・木戸克彦(85年V捕手)の功績が大きかったことも分かった。
小林は必ず「勝ちパターン」に入ってくる。それくらいチーム内の評価が高い。当欄でそんな話を書いたのは1カ月ほど前。この際だから、もういっちょ書いておきたい。小林がデイリースポーツの1面を飾る日は、そう遠くない。=敬称略=