根尾と勝負した結果

 【4月28日】

 根尾昂にタイムリーを浴びた。二回である。これで0-2。一塁ベース上で高卒3年目のスター候補は少しはにかんでいた。まだまだ打率は低いけれど、台頭すればやはり脅威になる選手である。

 終わってみれば、あの1点が響いた格好だ。1点を奪われ、なお2死二塁で打席に8番の根尾。次打者は投手の勝野昌慶だった。冷静に振り返れば…と感じないこともない。しかし、根尾は打率1割台。結果論といえば結果論だし、それも野球…次回同じ局面があれば阪神ベンチは慎重になるし、根尾への警戒度も変わってくる。

 根尾が大阪桐蔭で甲子園春夏連覇を達成した18年。個人的に、藤浪晋太郎に聞いたことがあった。

 プロでは投手か野手か、どっちでやるんだろう?

 「野手でいくんじゃないですかね。根尾は投手よりも野手のほうが成功するのかなと、個人的には思いますけど…」

 高校時代の根尾といえば、二刀流。大谷翔平以来のチャレンジが見られるのか…なんて楽しみにしたけれど、中日との仮契約時だったか、根尾はあっさり「野手一本でいきたい」と宣言した。

 今年は初の開幕スタメンを勝ち取り、開幕2カード目の巨人戦でプロ初打点を挙げた。この夜のタイムリーで6打点目。できれば、阪神戦では眠っておいてほしい才能である。

 岐阜出身で小学生のときドラゴンズジュニアで活躍した彼は生粋の竜党。相思相愛でブルーのユニホームをまとった幸せな選手だ。 「プロの世界で超一流になることを目標にしたい」。4球団競合で中日に1位指名された際、根尾がそう発したことが記憶に残る。

 育ってきた野球環境は違えど、「超一流」を目指すこちらの若者も4球団競合のドラ1である。

 西宮で育ち、タイガースジュニア出身の佐藤輝明がプロ野球新人記録をかけて打席に立つ日々だ。

 「俺と比べるなよ。レベルが違うんだから」

 テルが開幕2戦目でプロ初安打となるプロ初本塁打を放った日、矢野燿大はそう語っていた。虎の将もプロ初安打が初本塁打だったことから「そういえば監督も…」と、取材陣から振られたわけだ。

 矢野が中日でルーキーだった91年の夏、メモリアルアーチを架けたのは奇しくも阪神戦だった。レベル云々はともかく注目度は確かに比べものにならない。「矢野1号」を本紙で検索しても見当たらず、当時の紙面を確かめてみると掲載は記録のみで原稿は1行もなかった。そもそもプレースタイルが違うのだから、矢野が言う通り「比べる」ものではないけれど。

 この時点で7発打っていること自体、テルは超一流の有資格者である。矢野と比べる前に…通算476本塁打の金本知憲でさえ、1年目は0本。年間7本は、3年目以降(94年に17本塁打)だった。

 4月も残すところ2試合。テルの8本目は生まれるのか。連敗は悔しいけれど、そんな楽しみをもって試合を見られるのは書き手としても幸せである。=敬称略=

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