巨人戦10号に最敬礼
【4月20日】
大山悠輔の一撃が右翼席へ飛び込んだ瞬間、僕は「強」とツイートした。三回である。J・マルテの連発、そして、4番の2号で5-0。先制点、大山弾…「神話」通りなら虎が優勢…。強い。
しかし、その直後、フォロワーさんからツッコミが入った。
「油断大敵です」
「油断は禁物です」
阪神ファンは冷静である。
仰るその通りで、巨人の追い上げが待っていた。西勇輝も油断したわけじゃないだろうけど、三回に2点差とされ、五回には1点差…楽勝ムードは吹っ飛んだ。
序盤に5点リードを奪えば、ちょっとばかり気は緩む。選手だって人間。そんなものだ。でも、一度とんでもなく痛い目に遭った者は、二度と緩んではいけないと肝に銘じる。矢野燿大も間違いなくその一人であり、まして立場上…いや、僕が言うまでもない。
しつこいようだけど、もう一度書いておきたい。
3月の当欄で僕は今季セ・リーグを制するのは阪神タイガースであると書いた。やらなくてもいいのに毎年続けるV予想。あろうことか(!)「阪神優勝」と書いたのは初めてだ。そして、こう付け加えておいた。秋まで巨人と優勝を争い、最後は阪神が勝つ、と。
カッコつけて、自信満々に予想しておきながら、油断すれば…の但し書きを添えたくなるのは、13年前のトラウマが消えないから。
そう。屈辱の08年である。
7月9日に巨人に最大13ゲーム差をつけながら、10月8日にひっくり返された悪夢を忘れることはない。ときの監督・岡田彰布は独走の最中(さなか)「危ないよ」と自ら率いる虎を俯瞰するように警鐘を鳴らしていたけれど、皮肉にもその通りになった。
あのシーズン、僕は完全に浮かれていた。V旅行のプランをリアルに練っていたほど、ルンルンだった。あんな楽勝ムードが暗転するなんて考えもしなかった。
阪神ベンチにアレを経験した者は少なくなった。記者席でアレを経験した者も少なくなった。
8連勝で2位巨人と4差。確かに、強い。だけど、もしあの年の僕のように浮かれてルンルンの後輩がいれば、釘をささねば…。
油断は禁物。油断は大敵。
僕はそう言い聞かせながら強者の戦いを見させてもらっている。 そういう意味で、この夜しびれたのは、油断??するわけないぜ!とばかり、駄目を押した大山の2発目。さすが4番である。
いつ打つの?今でしょ!(ちょいと古いけど)とばかり、4打数3安打3打点。かつて、掛布雅之は巨人戦通算で打率・291、70本塁打、193打点を残し、金本知憲は同じく巨人戦で打率・283、96本塁打、280打点を挙げた。歴代4番に負けじと大山はこの夜の2発で対巨人10本目の本塁打、そして同打点は40に達した。
「油断してしまうと一気に足をすくわれますし、心の緩みはなくしたい」。そう語る大山だ。巨人戦に燃える4番を頼りにしたくなるVロードである。=敬称略=