不安なく立てるゆえ…

 【4月15日】

 ど、どうしたんや?

 五回の秋山拓巳を見て、そう漏らした虎党は多かったと思う。先頭の長野久義に四球、続く田中広輔にはストレートの四球を与え、ピンチを招いた場面である。

 精密機械…。

 球界屈指の与四球率を誇る秋山を僕は当欄でそう評してきた。そんな右腕が、得点した直後に1イニング2四球。しかも下位打線に…。モニターを見れば投手コーチ福原忍もやや心配顔に映った。

 投手床田寛樹に代打が送られ、1番を担う首位打者・菊池涼介ら上位につながる。中盤でリードは4点。さあ、どうする?

 そんなふうに見ていたら内野手が好守で秋山を救った。

 1死一、二塁から菊池が放った二塁ベース寄りの打球をショート中野拓夢が好フィールディングで防ぎ、さらに続く2死一、三塁のピンチでは堂林翔太の転がした三遊間への難しい打球を大山悠輔が好捕。球数も多く、本調子とはいえなかった精密右腕を要所で守備陣が救ったのだ。

 「きょうは自作自演のピンチばかりだったので、ずっと必死でした」。お立ち台でそう語った秋山は7回110球を要しながらも、無失点。振り返れば、ピンチをしのぐ度に秋山は相好を崩し、内野手に拍手をおくっていた。

 きょう書きたいのは秋山の制球について…ではなく、守備陣のディフェンス力が及ぼす、自他への作用についてである。

 この夜、開幕から続いていた菊池の連続試合安打が「16」で止まった。菊池といえば、今季はとくに「打」で際立つ男である。開幕から首位打者を快走してきた彼だけど、ご存じのように昨シーズン守備率100%を誇った球界ナンバーワンの名手だ。

 菊池を好例とする「守備と打撃の相関性」について、最近、カープ首脳に聞いたことがある。

 「守備がいいと打撃も良くなる…これはよくあることです。昔なら宮本慎也さんもそうでしたし、中日の荒木さん、井端さんもそうですよね。守備でレギュラーを獲った選手が次第にバッティングが良くなるのは、不安なくグラウンドに立てるからだと思います」

 緒方カープの3連覇を支え、現在カープの2軍打撃コーチを担う東出輝裕が教えてくれた。

 「僕は最初守備に不安がありましたから…。守りが覚束ないと、どうしても、打撃に影響が出たりするものです。キク(菊池)なんて守備が自信に溢れているので、打撃にもいい影響が出る。阪神ならルーキーの中野選手なんかはそんな選手なのかもしれませんね」

 東出目線である。

 カープ先発が左腕の床田でもスタメン出場した中野は長打2本で打率は・500。もともと守備力に定評があった新人が打撃で際立ち、レギュラー争いを活性化させるのも、阪神の強みといえる。

 守備でノッてきた大山にも1号が飛び出した。好守が打撃へもたらすプラス作用…。打撃向上の近道は、実は守備力を磨くことからかもしれない。=敬称略=

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