JFKを凌いでゆけ
【3月19日】
幕を開けたセンバツは初戦から延長戦になった。2年ぶりの球春にシビれたわけだけど、やはり、野球は投手。締まったゲームを満喫しながら、10回を投げ抜いた北海のエース木村大成の涙に頷く。
木村は今大会屈指のプロ注目左腕である。立ち上がりから前評判通りの好投を見せ、攻撃陣は先制したけれど、3投手を継投した神戸国際大付に逆転負け。早々と甲子園を去った。高校野球の難しさを見たわけだけど、そんな甲子園を眺めながら虎を思えば…。
そう。今年のプロ野球は、野球の醍醐味でもある延長戦がない。
僕が連休をもらっている間に、今季ペナントレースの「9回打ち切り」が決まった。18日にNPBと12球団が臨時の実行委員会を開き、コロナ禍に於いてスピードアップを目指す方針を固めたのだ。
阪神球団幹部の一人は「1チームの引き分けは10試合を超えるのでは?先制が大事になりますね」と話していたが、全試合の延長なしは、史上初めてのこと。どんな形になるにせよ、シーズンが様変わりすることは想像に難くない。
盤石の継投で、先行逃げ切り。
そう聞いて野球ファンが思い浮かべるのは05年のJFKだろう。七回までリードすれば無双。胸のすくようなチームを作り上げた岡田彰布に虎党も我々も感謝したものだけど、今年も伝説に残るブルペンの再来を期待するのだ。
21年は、阪神が優勝する。
前回、そう書いた。佐藤輝明の輝きでそんな機運も高まる。新人がけん引するシーズンも大歓迎だけど、阪神Vを予想する根拠に、僕はブルペン陣の充実を挙げた。毎年後ろはええやん?その通り。でも、今季はその中でも特に「ええ」と想定する。
岩貞祐太-岩崎優-R・スアレス。矢野燿大は七回からこのリレーでゲームを締める方程式を準備するが、軸の3投手をバックアップする中継ぎ陣が今年は厚い。
オリックスからトレード移籍した小林慶祐の話を前回書いた。この夜も光った小林のウイニング球フォークボールについて、本紙評論家の狩野恵輔は捕手目線で「相当なキレがある」と話す。チーム内を取材すれば、安芸キャンプスタートの小林が1軍合流した際の首脳陣の驚きは半端なかったのだとか。「めっちゃ、まっすぐがようなってる」。直球が走る分、フォークも冴える。阪神スコアラーの山崎憲晴に聞くと「(イメージでいえば)上にあがらずそのまま落ちる軌道。巨人で抑えをやっていた頃の久保さんのフォークに似ているかも…」という(久保裕也が11年に達成した20試合連続無失点は当時巨人の球団記録)。
フォークといえば加治屋蓮のキレ具合も「えぐい」と阪神捕手陣が口を揃える。さらに、桑原謙太朗の変化球も「えぐさ」が復活の兆し。小林、加治屋、桑原の3投手は1軍の実戦でいまだ防御率・000。そして矢野がキャンプ中に絶賛したルーキー石井大智に、馬場皐輔、小野泰己、J・エドワーズも…。虎のブルペンよ、JFKを凌いでゆけ。=敬称略=