Unityを叫ぶ

 【1月21日】

 アメリカ合衆国ドナルド・トランプ前大統領の退任演説、ならびにジョー・バイデン新大統領の就任演説を生中継で見た。思想云々は別として、この国の歴代リーダーはとにかくスピーチがうまい。

 夜中でも眠くならなかったし、両氏とも一枚のペーパーもなく発信する揺るがぬ信念、その言葉はビシビシ伝わってくる。だからこそ(日本ではまずそんなことはないが)テレビ討論会の弁舌で世論が大きく動きもするのだろう。

 新型コロナウイルスによる死者が40万人を超え、おびただしい失業者による経済格差は深刻。国民の分断に歯止めをかける仕事は並大抵ではない中で、新大統領が何度も繰り返したキーワードは「Unity」=「結束」だった。

 「私の魂のすべては、米国を一つにすること、国民を結束させ、国を結束させること、このことに向けられている」

 新リーダーがそう宣言した一方で、今のアメリカは「結束」なんて絵空事に思える。仮に分断を少しでも和らげる〈ワクチン〉があるとすれば、それは間違いなく神がかり的な経済の再建策であり、経済が目に見えて上向けば「Unity」も夢でなくなるような。

 先日、サンディエゴに暮らしていた我が家の隣人が一時帰国し、今度はジョージア州アトランタへ引っ越すと言う。アトランタといえば、かつて米主要都市における貧富格差が最大だった街だけど、それこそ活気の源を探してみる。

 地元アトランタ・ブレーブスが21年間遠ざかるリーグ優勝を果たせば、かつての五輪都市にも潤いが…なんて話で盛り上がったり。

 さて、阪神タイガースの地元・西宮で暮らす僕も、そろそろ、05年以来遠ざかる活気がほしいと願う。もちろん毎年願っているのだけど、疎遠になればなるほど、悲願は強くなるものだ。

 とってつけるわけではないが、僕は「Unity」こそが、矢野阪神の主題とも重なると感じる。選手の、そして、ファンの…である。昨年、阪神は「結束」できていたか。それはチームにいた者が一番分かる。コロナ禍が招いた不幸、ネガティブな過去を掘り起こす筆は不毛だし、そんな趣味もない。ただし、同じ轍(てつ)を踏まないマネジメントが強く求められることはいうまでもない。

 「最終的には若手を含めた競争になる。ポイントは、その競争を含めた結果を公平に見てやることだ。でないと、チームはガタガタになる」-。

 この日の日経新聞で、大補強した原巨人へ警鐘として権藤博がそんなコラムを綴っていた。ガタガタ…つまり「disunity」=「不和」を招かないためにも、フラットに結果主義を重んじるべきだ、と。もちろん、チームによって必ずしもの…要素はあるけれど、言いたいことはよく分かる。 さあ、キャンプの振り分けが決まった。無観客だからこそ、「結束」を強く意識する春。チームもファンも、一つになるための〈ワクチン〉は「勝利」しかないことを年々強く感じる。=敬称略=

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