わが道をいく甲子園V腕
【11月4日】
甲子園のV右腕が「最終戦」で次のステージへ思いを巡らせた。
「期待を裏切らないように、結果を残していきたいです」
甲子園3年ぶりの勝利を逸した藤浪晋太郎のことではない。
先日のドラフト会議で阪神がドラフト5位指名した東洋大4年の村上頌樹(むらかみ・しょうき)である。この日東都大学野球秋季リーグで最終戦を戦った東洋大は駒大に勝利したわけだけど、右腕を痛めている村上は神宮球場でスタンド観戦。阪神入団後の意気込みを問われると、「投手なら誰にも負けたくないです」と、勝ち気な内面をのぞかせた。
村上といえばご存じ16年センバツの優勝投手。東洋大時代よりも智弁学園のイメージが強いので、4年前の当時は勝手に奈良出身だと思っていたら、生まれも育ちも淡路島。彼とはまったく面識がないけれど、実は、彼の恩師とは仲良くさせてもらっている。
「普段はのほほんとしているんですけど、試合になれば、バチッとスイッチが入る子でしたね。頭の良い投手ですよ。何をやらせてもソツなくこなしますし、器用な子でした。それと…すごく負けず嫌いでしたね」
こう語るのは庄田隆弘。03年度ドラフトで智弁学園からシダックスを経て阪神に入団。鳥谷敬と同期で10年限りで引退した彼はいま淡路島で中学硬式野球「ヤング淡路」の監督を務めている。
中学時代の村上は庄田の教え子であり、庄田の薦めで智弁へ進学した経緯も…だから甲子園優勝へのプロセス、そしてプロへの礎を築いたエピソードなら山ほど持っている恩師なのだ。
プロで花を咲かせることができなかった庄田にとって、村上は夢を託す星であり、阪神に指名されたことも深い縁を感じている。
村上クンという男をひと言で…無理ならふた言で。
そんな問い掛けに庄田はこんなふうに答えるのだ。
「普段の努力を他人に全く見せないタイプ。我が道をいくタイプで、芯の強さがありましたね」
なるほど、それは阪神向きかもしれない…。
12球団の中でも独特なこの伝統球団で生き抜き、また結果を出すためには、それこそ鳥谷のようにまた藤浪のように、大山悠輔のように、我が道をいく芯の強さが要ると僕は勝手に思っている。
智弁学園の先輩で巨人の岡本和真を抑えること。それが村上のモチベーションにもなっているようだけど、ぜひ、来年にも叶えて欲しい。さらにヤクルト戦では「村上対決」も制していただいて、大山のホームランキング争いを援護してもらえれば…。この夜は気分がいいもので、そんな、少し気の早いことも書いてみたり。
大山のサヨナラ弾を眺めながら思う。同級生藤浪の粘り、踏ん張りが生んだ27号じゃないかと。群れず、日和らず、我が道をいく。阪神で大成功する(と確信する)2人のセンパイを村上は見倣えばいい。藤浪以来となる甲子園V腕の入団が待ち遠しい。=敬称略=