順位を逆さに眺めて

 【10月27日】

 ソフトバンク3年ぶりのパ・リーグ制覇を呼び込んだのは甲斐拓也だった。六回2死三塁、フルカウントから石川歩の直球をペイペイドームの左翼スタンドへたたきこみ千葉ロッテの悲願を砕いた。

 三回には周東佑京が二盗に成功し、球団記録を更新する10試合連続盗塁を達成。Vに花を添えたわけだが、このゲームを見るにつけあらためて鷹の層の厚さが羨ましくもなる。と同時に、前夜、佐藤輝明に沸いた阪神タイガースのドラフトを思うわけだ。

 佐藤ゲットの瞬間、鳥肌が立った虎党も多かったはずだけど、ソフトバンクの面々を眺めていると阪神のドラフト指名順位を逆さにして噛みしめてみたくなる。

 ご存じ、甲斐は10年度ドラフトの育成6位だし、周東は17年度ドラフトの育成2位。エース千賀滉大は甲斐と同じ10年の育成4位。どんだけ育成から花開くねん…しかも全国区の一流に。

 筑後で育って、鳴尾浜では育たないのか。確かにファームの施設だけ見れば、あえて書くが、現状阪神はソフトバンクに〈大敗〉している。では、施設があれほど充実しているからソフトバンクの育成選手は一流に育つのか。もし、そうだとしたら、福岡出身で九州産業大の彼は阪神よりもソフトバンクへ行きたかった…だろうか。

 前夜、タレント松村邦洋から連絡をもらった。

 「故障明けですが、育成よろしくお願いいたします」

 九産大出身の松村は、同大野球部・岩田将貴の阪神育成1位指名を喜び、まるで我が子を預けるかのように僕にまでそう言うのだ。

 昨夏に左肘靱帯を手術した岩田だけど、阪神球団の幹部に聞けば「ケガから復調すれば活躍できると見込んでいる」とのこと。左サイドハンドの彼が阪神育成の星になれば…松村の破顔が浮かぶ。

 今ドラフトの育成指名といえば中日の育成2位、精華高校の松木平(まつきひら)優太である。大阪の精華?いや、知らない…そういう方も多いと思うし、僕も知らなかった。そんな無名校の右腕がなぜドラフトにかかったのか。

 阪神の関係者に聞いても「詳しくは見ていない」という隠し球だったけれど、実はこの松木平は今夏の練習試合で昨夏王者の履正社相手に快投を見せ、一躍ドラフト候補に名乗り出たと聞いた。

 この試合、長男勇輔の観戦で訪れていた関本賢太郎は、松木平の存在をそこで知ったという。無名の彼が育成から這い上がれば、何年後か中日スカウトの眼力が評価される日がくるかもしれない。

 それはそうと、関本勇輔はなぜどこにも指名されなかったのか。彼に対する阪神の評価はぶっちゃけどうだったのか。メディアの露出は群を抜いていたのでそう感じるプロ野球ファンも多いと思う。例え育成からでも必死のパッチでのし上がる勇輔の勇姿を見たかった気もするけれど、聞けば、ある名門大学に内定しそうなので4年後のドラフトを楽しみに。僕はひとまず虎唯一の育成指名、岩田将貴に肩入れしてみる。=敬称略=

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