ピチピチの41歳です

 【10月22日】

 この日、能見篤史と話をした。こんなこと書くと阪神球団に怒られるかもしれないけれど、僕から連絡をとらせてもらった。私的な話なので中身は控える。が、ひとつだけ伝えられることはある。

 彼はまだまだ元気だ。

 既に読者もご存じのことだからあえて詳しく触れないが、一報を聞いて浮かんだこと、それは…。

 ああ、もう沖縄で「打ち上げ」できないのか…。

 何年前からだろう。

 2月の宜野座キャンプで僕が勝手にルーティンにしている「能見会」があった。会といっても、大袈裟なものではなく、最少人数。ときは決まってキャンプ最終日の前夜だった。

 今回のキャンプはどうだったこうだった。今年のペナントはどうなるこうなる。家族はこんなあんな…他愛ない話から、少し硬めの野球談議まで、アグー鍋をつつきながら語り合うのだ。

 コロナ禍で今年は控えたので、また来年だね…なんて話していたものだから、毎春の楽しみが急に消えてしまった寂しさは、僕の中で結構深いものだったりする。

 能見篤史は若い。元気だ。

 さっきも書いた。

 今年5月の彼の誕生日に本人に直接そんな話をした。「見た目年齢」って医学的にも証明されているらしいよ…ってなことを伝えると、彼はちょっぴりふざけながらでも、きっと矜持をにじませながらこう言ったのだ。

 「ピチピチの41歳です!」

 この夜のマウンド…読者の皆さんはどうご覧になっただろう。

 僕の目には少なくとも、41歳の腕の振り、41歳のクロスファイアには映らなかった。

 何を書いてんすか、風さん。あんなもんじゃないですよ-。

 当欄の勝手な筆にもしかしたら能見はそう反論するもしれない。

 20年は、球界で故障者がよく出たコロナ禍のシーズンである。

 藤川球児も、能見も、そんなエクスキューズを語らない一流だけど、間違いなく、特にベテランの体にはこたえる年になったはず。だから、できることなら、健全なシーズンをもって燃え尽きたい。そんな思いが背番号14の胸中に間違いなくあると僕は見ている。

 「14番の歳はいくつだい?」

 19年の沖縄キャンプで当時の新助っ人P・ジョンソンが能見を指してこう尋ねた。チームメートが実年齢を伝えると、ジョンソンは「アンビリーバブル」と両手をあげた。L・ドリスは「ノーミさんは32歳くらい?」と聞いていた。

 個人的な願望を書けば、能見にはタイガースでユニホームを脱いで貰いたい…いや、それをいま書いちゃダメか。決して球団と喧嘩別れしたわけじゃない。彼が最終結論を出すまでは、オッサン記者は静かに見守ることにする。

 「自分が辞めるとか、辞めたくないとかっていうよりは、いずれは導かれるものだと思っているんでね…。それがいつになるか分からないですけど…」

 最後の「打ち上げ」で能見はそう語っていたっけ。=敬称略=

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