チケット苦戦の先に…

 【10月1日】

 西宮市の社会福祉相談センターを一歩出たところで、ばったり阪神の球団関係者と出くわした。この日、朝のことだ。「あれ?風さんここで何してるんですか?」。いやちょっと、母親のことで…。

 「あぁ、お母さん、入院されてるんでしたっけ」

 ありがたいことに、当欄をよく読んでもらっている。

 私事だが、先月入院した母がこのたび転院し、長期で入院治療に専念することになった。歳も歳だから仕方ないのだけど、コロナ禍による想定外は多い。病棟は面会禁止なので、母の顔をうかがうことは叶わない。身辺の世話ができないのは、実は、様々な弊害が…って、こっちの話はこのへんで。

 その転院先で介護保険の申請を薦められ、相談センターへ出向いたわけだけど、前述の球団関係者と立ち話すれば、彼は彼で「大変なシーズンになりましたよ」と疲労感をにじませるのだ。

 球場サイドを取材すれば、残りのホームゲームのチケットは苦戦しているという。そうでなくとも苦難の今季は開幕前から赤字前提の経営を余儀なくされている。そんな難局下、阪神の本社、球団職員は疲弊し、次第に社内はギスギスしてくる。ふだん冷静な管理職が大きな声をあげ…虎の内輪を取材すれば、そんな話も聞こえる。

 度々書くが、今年は「平時じゃない」ことを前提にこちらも構える。少なくとも、僕はそういう認識でPCのキーをたたいている。

 母親は病床で阪神戦の中継を見る。当欄のフィルターを通して情報を得るので、必然、僕がよく取り上げる選手を応援するようになった。大山悠輔、北條史也、梅野隆太郎、原口文仁、小幡竜平、そして藤浪晋太郎…もちろん福留孝介も。彼らが振るわなければ、まるで身内のごとく悔しがる。「しっかりして」と叱る。また、その逆なら、見るからに若返る。

 だから、頑張れ!とここで書くのはおかしいけれど…。

 転んでもただでは起きない虎でいてほしい。この度の〈コロナ余波〉を受け、先日から何度もそう書いている。

 160キロ連発…先週の緊急昇格がなければ、晋太郎の新境地、そしてセカンド北條とのグラブタッチは拝めなかったかもしれない。

 中秋の名月を見上げる。

 なんとも清々しい夜だ。

 この日、神戸市のデイリースポーツ本社では、新入社員の内定式が行われた。僕らの仲間になる彼ら、彼女らは、今どんな思いで、窮地から這い上がろうとする阪神を眺めるのだろう。もしプロ野球の記者を志す若者がいれば、こちらが伝えるべきことは何か。

 ここで冒頭の球団関係者との会話に戻さなければならない。

 「僕らの目標ははっきりしていますけど、野球記者さんって何を目標にするんですか?」

 長く球団にいる彼が立ち話でそもそも論を振ってきた。目標…我々の存在意義とでもいうべきか。

 取材して事実を掴み、読者に事実を伝えること。これに尽きる。そう答えておいた。=敬称略=

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