一番の人に興味がない

 【9月17日】

 おい、そこのバイト!締め切り間際にもたもたすんじゃねえぞ!なんて罵声を浴びたんだろうか。

そう考えたら、ウチのアルバイトさんだって、将来、国のトップに立っちゃうかもしれないぞ?

 菅義偉(すが・よしひで)新首相は半世紀前、都内の報知新聞社でアルバイトをしていたそうだ。先日、国会内でスポーツ7紙の合同インタビューに応じた菅サンは法大時代を振り返り、苦学生だった当時を懐かしんだ。

 「(現場から)送られてきた記事を(編集の)記者さんに走って渡すんです」-。

 ブンヤの使いっ走りだった学生が一国の総理に上りつめる。地縁も血縁もない政界で成り上がった大出世は夢があるけれど、よりによって巨人軍と一心同体の社で…なんて書けば、ずっと憂き目にあってきた愛虎家のやっかみか。

 そういえば、何年前だったか、前総理はデイリーにリップサービスしてくれたっけ。スポーツ紙の共同インタビューでトラ柄のネクタイを着用した安倍サンは、自身が神戸製鋼に勤務した過去を懐かしみ『あの会社は阪神ファンじゃなきゃ生きていけない』。破顔して虎への愛着をのぞかせたのだ。

 戯言はともかく、「続・安倍政治」を打ち出す菅新政権には一国民として、もちろん関心がある。

 菅新首相は「好きな戦国武将」についてこれまで「豊臣秀長」と公言してきた。あの秀吉の弟だけど、一般的に聞き慣れない名だ。なんでも「一番の人に興味がなかった」-それも理由だという。

 堺屋太一著『豊臣秀長』-ある補佐役の生涯-(文春文庫)をたまたま読んだことがあるのだが、秀長という男を端的に記せば、天下統一した兄を堅実に支えた超一流のナンバー2といったところ。

 開幕から東京ドームでの連敗を8で止めた矢野阪神だけど、僕は巨人に独走を許したこのチームを見つめるとき、ずっと気になっていることがある。矢野燿大を支える腹心の任務についてだ。

 ヘッドコーチ清水雅治が、矢野たっての希望で迎え入れたナンバー2であることは読者もご存じ。そんな懐刀が今季どんなマネジメントでリーダーをフォローしてきたのか、その現在地を知りたい。

 コロナ禍の規制で本人と直接話せないのは痛恨だけど、実は開幕前、清水とじっくり向き合う機会があった。取材外を前提に話したので中身は控えるが、この人なら大丈夫…あのとき、そんな思いを寄せた。何が大丈夫かって、矢野への進言役になりうるか否か。

 金本知憲政権時代、作戦兼バッテリーコーチを担った矢野に聞いたことがあった。腹心として金本に言いたいことを言えるかどうか…。矢野は「難しいんだけど、言うようにしたい」と語っていた。この夜、巨人ベンチではヘッド代行の阿部慎之助が多くの選手に何やら語りかけていた。親分との橋渡し役に徹しているのだろうか。 いずれにしても僕は、虎のナンバー2、清水のマネジメントに期待しながら残り45試合を追う。当然、ドラマを信じて。=敬称略=

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