追い込まれればバットを…
【8月28日】
阪神広報からトレード成立のメールが届いてから26分後、ヤフーニュースで永田町を揺るがす速報が流れた。一般紙の政治部はバタバタだな…そんなことを考えながら、ある人の言葉が浮かんだ。
「貧乏クジだろうがなんだろうが、ひるんでいるようでは、大きな目標にとてもたどり着けない」
広島1区選出の自民党・岸田文雄政調会長である。
安倍辞任の一報を受け、改めて総裁選へ強い意欲を示した「ポスト安倍」の一人だけど、なぜ「貧乏クジ」なのか。それは、長期政権後の内閣が短命とされる永田町の歴史を語ったもので、事実として、5年5カ月続いた小泉純一郎政権後の第1次安倍内閣は1年程で幕を閉じたからだ。
岸田政調会長といえば、生粋の鯉党であり、緒方政権時の16年にマツダスタジアムで始球式をしたこともある。その16年はカープ3連覇の入り口。そう考えれば、球界だって同じじゃないのか…。
5年続いた黄金期の緒方政権を継いだ佐々岡真司だけど、僕なら引き受けたくない。だって、緒方時代は良かったなぁ…などと、絶対比べられるに違いないし…。
「ありがたい気持ちと、自分で良いのかなという不安な気持ちと両方あり…」。監督就任会見で揺れた心をそう吐露した佐々岡だけど、その覚悟に敬服する。
佐々岡は「自分の色を出せればいい」とも語っていたけれど、早速、色を出したのが昨秋。佐々木朗希、奥川恭伸で賑わったドラフトに於いて強い意思で森下暢仁を一本釣り。自ら背負ったエースナンバー18を「継がせる」と語り、森下も見事、期待に応えている。
今ごろ、岸田派の牙城、広島は盛り上がっているのか…そんなことを考えながら、僕は自宅のある兵庫県でCT戦をテレビ観戦したのだけど、サヨナラ負け…。それでも、難敵を叩いた背番号3には拍手である。虎が3戦3敗を喫しセ新人王候補の森下が、ここまで唯一本塁打を許していた大山悠輔がこの夜も打った。
七回の一発で土壇場の同点劇に繋げたわけだけど、特筆は五回。ここまで1安打に抑えられていた森下に2球で追い込まれながら、外の変化球を左翼へ引っ張った。反撃の起点になったこの一打に、僕は彼の価値を見るのだ。
こんなことを書けば「甘い」といわれるかもだけど、僕は大山に対してとくに要望はない。だって彼はよくやっているのだから。
でも、あえて書くとすれば…。
「衣笠選手は追い込まれる度にバットを長く持つということをしていました。私は雑誌のインタビューで見たのですが、ストライクをとられて精神的にも追い込まれなおかつ、物理的にも追い込まれるようなことは、バカがやることだと…。こういったことで徹底的にバットを振り回していた。そういった躍動感溢れる選手でした」
これは岸田政調会長が、衣笠祥雄が永眠した夜に語った哀悼の意である。永久欠番、カープ背番号3のように…悠輔に贈りたい言葉だ。=敬称略=