最も注目された外れ1位

 【8月26日】

 12球団で最も早く中日がきょうシーズンの折り返しを迎える。8月首位の竜は60試合目を白星で飾り、次戦の地・東京ドームへ向かいたい。いや、そうはさせじと、虎は貪欲に3タテを狙うのだ。

 与田竜のV字回復を阻止したい矢野虎である。巨人への挑戦権を奪うキーマンは誰か。矢野燿大はきっと「全員」と答えるだろうけど、個人的には、あえて2人のドラフト1位に期待したい。

 投手は藤浪晋太郎。野手は近本光司。なんだフツーじゃねえか。その通り、フツーだ。もちろん大山悠輔、岩貞祐太を含め、ドラ1がフツーに…つまり、相応の数字を残せば、まだまだ日本一を信じる僕のメンタルも安定するのだ。

 12年度ドラ1の福谷浩司を相手に3発を浴びせた阪神である。

 あの年、中日は地元愛知出身の福谷を単独指名…つまり同年の目玉=藤浪晋太郎に見向きもしなかった(?)のだから、逆に、福谷という右腕の潜在性に僕は注目してきた。彼は今季先発として2勝を挙げているけれど、ここまでプロ7年間の主戦場はリリーフ。苦しみながら先週プロ51勝目を挙げた藤浪と単純比較はできないけれど、今後は先発同士、彼らの投げ合いも見てみたいものだ。

 早いもので、20年度のドラフト会議まで2カ月を切った。考えてみれば、阪神は3年連続で本命のドラ1を競合で外している。しかしながら、これもドラフトの醍醐味であり、少しゆがんだ見方かもしれないが、ありがとう!外れ1位!と、ほくそ笑むのも幸せだ。

 18年の外れ・外れ1位が今月ヒットを量産している。この夜2安打で大量点を呼んだ近本光司である。8月の月間打率は、近本がセ・リーグNo.1の・374。開幕から苦しんできた彼が1番で倍返しすれば、G猛追の夢を見られる。

 「近本という新人は、積極的な1番打者になるぞ」

 昨年の2月、背番号5の未来図をそう予想していた人がいる。中日チーフスコアラー佐藤秀樹である。佐藤と僕は同級生で、彼が偉くなる前は(?)よく絡んだものだ。一年経ってみて、佐藤はしかし「近本がここまでの選手になるとは…」と驚きを隠さない。長年007を担ってきた彼が舌を巻くのだから、ちょっと気分がいい。

 ドラ1の話でいえば、この佐藤こそ、史上最も注目された「外れ1位」である。92年度のドラフト入団…あの年、中日は誰を外したのか。いや、阪神もダイエーも涙を飲んだ……松井秀喜である。

 阪神は松井の外れ1位で安達智次郎。ダイエーは大越基…。安達は4年前に他界し、大越はもうプロ球界にいない。唯一この世界で働く…この夜、甲子園で目を光らせていた佐藤である。

 松井の外れ1位…当時プレッシャーはなかったのか?そんな問い掛けに、佐藤は答えるのだ。

 「特に重圧はなかったよ。俺の性格かもしれないけど…(笑)」

 そんな佐藤の息子、佐藤勇基は法大4年のプロ注目内野手。今秋ドラフトで…いや、その話はまた今度書いてみたい。=敬称略=

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