オーナーが日帰りで?

 【8月18日】

 プレーボールの2時間前、阪神球団本部長の谷本修は、東京ドームホテル内で開催された表彰に参加していた。ミスタータイガース田淵幸一の「野球殿堂入り」を祝い、記念品を贈呈する式である。

 そういえば、僕は谷本にこんな話を振ったことがある。

 藤村富美男、村山実、掛布雅之…ミスタータイガースは田淵さんのほか、複数いらっしゃいますけれど、ミスタージャイアンツって呼ばれる方、いらっしゃいます?長嶋茂雄さんは「ミスタープロ野球」ですもんね。

 すると、谷本は言うのだ。

 「本当ですね…。関西の野球熱が勝っていたからでしょうか…」

 沢村栄治も、川上哲治も、王貞治も、「ミスタージャイアンツ」とは呼ばれない。王さんがミスターじゃないなら、そりゃあ、原辰徳も、松井秀喜も名乗れないわけだ…なんて思いながら、谷本のいう「関西の野球熱」について考えてみたけれど、なかなか〈正解〉は見つからず…。

 そうか、斎藤雅樹に並んだか。開幕投手の開幕8連勝。もう敵ながらアッパレをあげるしかない。菅野智之こそミスタージャイアンツ…なんて、デイリーのオッサン記者が語っちゃ、G党からお叱りを受けるか。いや、彼はその名にふさわしい。悔しいけれど。

 「今季初の中5日?中5日でヒーヒー言っているようじゃ、先発投手は務まりませんから」

 お立ち台で涼しげにそう語った菅野はこれで今季の阪神戦3戦3勝。対阪神は通算でも、17勝8敗と、9つも勝ち越している。

 そう考えると、おのずと〈その条件〉が見えてくる。

 伝統の一戦で敵軍から最も憎まれる男こそ、ミスター。

 天覧試合で唯一のサヨナラ弾…だから、長嶋茂雄はミスター。僕なりに、そう理解しようかな…。

 そりゃ、最後は期待した。何を?って、九回2死の大山悠輔に決まっている。J・サンズが菅野から初の四球をもぎとり、打席に4番。ここで打ってこそ-の願いは叶わなかったけれど、プロ4年目の悠輔には、菅野と「名勝負」を演じる大打者になってほしいわけだ。なぜって何度も書くが、プロ入り3年間の成績を田淵幸一と比較すれば悠輔が上回るのだから。

 そりゃ、どうしてもGの4番と比べられがちだけど、そんなのはどうでも……よくはないか。この夜、唯一の得点を挙げた岡本和真の成績を確かめると、この男やっぱり「虎キラー」じゃないか。岡本の対阪神戦打率は・315。本塁打は16本、そして気になる打点は対戦カード別最多の54。10数年経てば「令和のミスタージャイアンツ」襲名もなくはないぞ。

 そうそう、冒頭で書いた田淵幸一の「殿堂入り表彰」には阪神オーナー藤原崇起もお見えだった。

なんと、虎の総帥はこの式のためだけに、日帰りで東京まで駆けつけたというのだから、やはり、ミスタータイガースへの敬意は格別なものがあるのだろう。

 G軍から憎まれる男…次代のミスターよ出てこい。=敬称略=

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