死んでも嫌だね!

 【8月14日】

 こども達の間でやや品のないフレーズが流行っているそうだ。

 「死んでも嫌だね!」

 ドラマ『半沢直樹』で大和田常務が吐き捨てた台詞だけど、ときにオトナだって使いたくなる。

 一週間は早いもので明日はもう『半沢』の日曜日だ。前回の第4話がまたお化け視聴率をたたき出したTBSの「日曜劇場」に、僕もしっかりハマっている。

 同局「王様のブランチ」にゲスト出演した大和田常務役の香川照之は、例の名台詞について「よい子のみんなは真似しないように。中年より上じゃないと使っちゃダメですからね!」と笑っていたけれど、じゃ香川ルールに照らせば中年より上のオッサン記者は使っちゃってもいいのかな?

 というか、そもそも、中年の定義っていくつからいくつなのか。

 NHK放送文化研究所がウェブ上で行ったアンケート調査によると、世間の認識は「40歳から55・6歳まで」という結果が出た。

 なるほど、ならば阪神とカープの選手で「死んでも嫌-」を使っていいのは福留孝介、能見篤史、藤川球児、石原慶幸の4人のみ。39歳の糸井嘉男はまだNG…なんて、よく分からない切り口だと思われそうだけど、プロ野球の世界に接していてよく考える。

 40歳まで第一線でキャリアを重ねれば、強いこだわりだったり、自分を貫き通すスタンスは、ときに「あり」ではないか、と。

 「はぁ?死んでも嫌だね!」

 一歩も引かない執着心である。

 T、Cに限らず、シーズン中にベテランの起用法が難しくなる局面が出てくる。どこの球団も首脳陣のハンドリングがキーになるがこれを見誤れば、ベンチ内の雰囲気は推して知るべし。そんな類の暗雲を過去に何度か見てきた。

 「死んでも嫌」と発してもいい(!)40歳を超えたベテランは、概して調整も一任されるし、表現は正しくないかもしれないが〈わがまま〉も許容される。

 この夜、カープ森下暢仁に手玉に取られた阪神は、0-6の九回に糸井嘉男と福留孝介が続けて代打で登場した。このとき、サンテレビ解説の真弓明信は「僕は(こういう形で起用されるのは)嫌でしたね」と晩年の自身の気持ちと重ねていたが、果たしてどうか。

 取材が叶わない今、両ベテランの「答え」は確かめられないが、僕の目には、福留孝介の初球フルスイングが心地よく映った。森下が投じた149キロに対し、43歳の気持ちは明らかに京セラドームの外野5階席。親子ほど歳の離れた新人に完封を許す?「死んでも嫌だね!」…とは思ってないかもしれないけれど、それくらい気迫のこもったマン振りだった。

 藤川球児が出場登録を抹消された酷暑の盆である。

 彼らが倍返しする時間はまだまだ…嗚呼、そういえば、僕がこども時分の日曜ドラマといえば『西部警察』だった。大門団長の名台詞「自分で蒔いた種は自分で刈り取れ!」を真似た記憶がある。渡哲也を悼む夜、虎ベテラン勢の矜持を思う。=敬称略=

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