満員電車とセンバツ

 【3月4日】

 医学博士の中原英臣が今週号の週刊新潮で語る。「ウイルスが付着している可能性がありますから手すりや吊革につかまらない、これが基本です」。ウイルスから逃げる満員電車の乗り方-らしい。

 ふと思う。メディアで新型コロナウイルス感染の予防策を語る学者の方々は普段、満員電車に乗るのだろうか?例えば、通勤ラッシュの山手線や御堂筋線で立ち客が全員吊革につかまらないと、どうなるか。経験者は想像できる。

 中原博士は「誤ったこと」を語っていないだろう。ただ、そんなことは現実的に不可能…つまり、〈先日も書いたけれど〉今のニッポンは非常事態というしかない。

 甲子園球場のある西宮市にも感染者が出た。国内感染者は1000人を超えたという報道を目にした読者も多いと思うが、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広は、「既に日本の『隠れ感染者』は100万人」と語る(新潮誌)。ならば、単純計算で1県あたり約2万人の感染者…ってことなの?

 この日、日本高野連は結論を出せなかった。午後から運営委員会と臨時理事会が開かれ、センバツ開催は無観客試合を前提に準備するとしたが、歴史的決断は11日の臨時運営委員会へ持ち越された。

 「3月の甲子園」にお客が一人も来ないとなると、どうなるか。経験のないことなので想像できない。阪神対広島オープン戦の雨天中止が決まった後、僕は阪神・野田駅界隈で取材していた。

 「今年ウチのオープン戦の主催試合は京セラの1試合を含めて5試合。例年にあてはめると、利益は1億円強だと思います。それプラス(阪神)電車で来られるお客さんもいらっしゃいますから」

 野田駅に直結する阪神電鉄の本社筋にお金のハナシを聞いたところ、そんな答えが返ってきた。では、約2週間開催されるセンバツ高校野球は例年、阪神グループにどのくらい利益をもたらすのか。

 聞けば、およそ「球場で1億ちょっと。電車で1億ちょっと」なのだとか。2週間でそんなもの?と感じる読者もいるかもしれないが、センバツの入場料は主催者収入だから阪神には入らないし、野球振興への寄与だから球場使用料も阪神には入らない。阪神の利益は、基本的に「飲食物販売」になるのだが、センバツの収支をどの範囲まで見るかによって差異が出る為、一概に「利益がいくら」とはいえないのだとか。だから、これは独自取材による概算になるけれど、オープン戦とセンバツ高校野球で「3月の甲子園」にお客が一人も来ないとなると、ざっと4億円の利益が飛ぶことになる-。

 4億円?いい助っ人が獲れるやん…なんてファン目線の思考回路になれないほど、センバツのニュースはやはりショックである。

 「最近、通勤列車のお客さんも減っています。こんな状況がいつまで続くのか。終息して気持ちよく開幕を迎えたいですよね…」

 平時なら、阪神本社の方々も開幕へのカウントダウンで盛り上がりたい3月だけど…野田の取材はトーンが上がらない。=敬称略=

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