平らな大皿に山盛り
【2月15日】
沖縄タイムスが連載コラム「大弦小弦」で野村克也を追悼していた。内容は隆盛を極めたヤクルト時代、そしてID野球への敬意。だけどその文末は、ノムさんの悔恨で締められていた。
「野球では常に最悪の状況を想定しろと言ってきたのに、先立つ想定をしていなかった」
知将が最愛の妻サッチーをなくした喪失感を語ったものだ。
最悪の状況を想定する-。
プロ野球の世界において、この言葉は深い。采配、用兵、補強、育成…全てのものに当てはまる。タイガースを率いる矢野燿大も、カープ新監督の佐々岡真司も、そんな「ノムラの考え」をきっと念頭に置いて戦うシーズンになる。
ジャスティン・ボーアがもし……考えたくないけれど、そんな想定も矢野の頭にはあるはずだ。
阪神の場合、助っ人8人体制がどう活きるか、どう転んでいくか…これがチームの浮沈を左右することは、誰だって想像がつく。
片や、新生カープ最大のトピックは何か。カープを担当する阪神スコアラー太田貴は、僕の問い掛けにこんなふうに返した。
「一番は、ショートをどうするか。もう、そこじゃないですか」
田中広輔、そして小園海斗。復活を期す30歳か、希代の19歳か。リーグ連覇に貢献した頃の「タナキクマル」の一角が果たしてこんなに早く高卒のライバルが現れることを想定していただろうか。
「最近の1、2年目の子は本当にすごい」。そんな菊池涼介の言葉をきのう紹介したけれど、CとTのベンチ裏を取材していると、これは菊池だけの感想ではない。
「あいつのメシの量を見てびっくりしたよ。マジか?お前って。米を茶碗で食わないヤツを初めて見た。白メシを大きな平らな皿に山盛り…。茶碗で何杯もおかわりするのが面倒だから、最初からそうするらしい。新井、栗原も大食いだったけど、彼らを超えたよ」
これはカープ2軍監督・水本勝己の言葉である。「あいつ」とは木下元秀。昨秋カープが育成ドラフトで2位指名したルーキーだ。
誰を取材すればおもしろいか?
そんな僕の問い掛けに彼の名を挙げるカープ関係者は多い。ドラ1の森下暢仁はもちろん素晴らしいのだけど、育成2位がおもしろい!取材してみたら?という。
「この世界、内臓の強い者が勝つよ。食って、食って、体が大きく逞しくなる。そうして練習する体力、体の強さがどんどんついてくるんだよ。新井貴浩。あいつ、ドラフト何位だった?」
なるほど……と、水本の話にうなずく。ご存じの通り、新井はドラフト6位。ルーキー時代から彼を知るが、確かに、よく食った。
「今年の高校生は本当みんなよく食べる。例年にない量です」。こちら阪神トレーナー陣が発した虎の新人に対する総評だ。
最悪の想定…つまり、予備軍の発掘もまた今季の楽しみになる。ボーア??僕には、まだ分からない。彼には大山悠輔の後ろを打って欲しい、そんな個人的な願望はあるけれど。=敬称略=