R・バースは素手だっけ?

 【2月2日】

 宜野座のグラウンドで新助っ人が野球少年達と触れ合っている。「いいね!」「もっと笑って!」ジャスティン・ボーアがキャンプ恒例の野球教室に参加。時おり日本語を交え、笑顔を振りまいた。

 バットは素手で握るもんだぜ!とは言わなかったけれど、きっと少年達に伝えたかったはずだ。

 グリップを握るそのフィーリングを大切にしてほしいんだ-と。

 当方は少しだけ少年野球に携わっているので、今の子ども達のほとんどが革手袋をはめてバットを振ることを知っている。中学の硬式野球、そして高校野球でもそれは変わらないし、大学でも、プロ野球でも革手袋はスタンダード。だからこそ、ボーアの「素手」打ちがビッグトピックになるのだ。

 阪神のOBで中学硬式のクラブチーム「レッドスターベースボールクラブ」(赤星憲広オーナー)の監督を務める狩野恵輔は、宜野座でボーアを眺めながら語る。

 「僕はチームの子ども達に言うんですよ。練習によっては革手袋を外して打ってごらん、と。マメができて覚える感覚もあるし、手袋をしないことで(手の)痛みを通じて正しい打ち方が分かることもある。僕は現役時代、掛布さんから『手袋を外して打ってみたらどうだ?』といわれて、右手だけ外して打つようにしたんです。そうしたら感覚が良くなって…。繊細な感覚なんですけど、僕の場合もっと早くそうしておけばね」

 R・バースの再来-。ボーア獲得が決まったとき、本紙はアゲアゲでそう報じたけれど、因みに、バースって「素手」打ちだっけ?

 「阪神の外国人では、コンラッドが素手でしたよね。マートン?革手袋してましたね。記憶の限り一度も外したことはないですよ」 かつてM・マートンの通訳を担当した大木一仁が教えてくれた。R・バースも、C・ブラゼルも、希代の助っ人打者は両手に革手袋をつけてファンを魅了していた。

 「バットの感触を自分の手で感じたいんだ」-これが、ボーアが答えた〈打撃持論〉である。

 そういえば、狩野が師事した掛布雅之は現役時代「素手」でバットを握っていた。王貞治も、落合博満も「素手」だった記憶が微かに残る。あの時代、革手袋そのものがなかったわけでは、もちろんない。「そうそう、田淵さんは両手に手袋していたもんね」。阪神園芸の甲子園施設部長・金沢健児がそう懐かしむように、確かに田淵幸一はSSKの革手袋をつけて大きなアーチを描いていたっけ。

 PL学園時代、素手打ちで本塁打を量産した福留孝介がボーアの打撃を見つめていた。「素手」の真意を確かめてみると…。

 「僕らの高校時代は(革手袋は皆)しなかったですからね」

 今、革手袋を外してボーアのように素手で打てと言われたら?

 「嫌だね、僕は。やっぱり、つまったら痛いし。手袋の感覚に慣れているからね。(素手がいいという感覚は)僕には分からないけど…人それぞれだと思いますよ」

 そう。一流の感性に○×はない!打ちゃ、いいんだ。=敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス