人生は「挨拶の3秒」で変わる

 【11月16日】

 阪神球団本部長・谷本修との雑談で「声の大きな人」の話になった。城崎や湯布院で有名な「絶叫大会」が主題ではない。いつも元気に声を張る阪神の球団職員について「いいね」という話である。

 「彼は声が大きいでしょ。だから、いつも球場で彼の居場所が分かる。声の大きな人間に悪い人間はいないって言いませんか?」

 谷本の言う「彼」とは、球団広報課長の新田慎也だ。確かに新田の声は通るし、いつも元気。「あぁ、風さん、おはようございます!」。少々遠くからでも、決まってそうやって挨拶してくれる。体育会育ちの僕からすれば気持ちのいい挨拶だし、谷本の言うようにきっと「悪い人間じゃない」。

 僕は番記者時代、周りから「厳しいキャップ」とよく言われた。

若い記者にとっては「煩かった」と思う。後進指導のアプローチはそれぞれだけど、こちらから煩く言ったのは事細かな類ではない。

 新聞を読む。約束を守る。そして、挨拶をする。当たり前に思えるけれど、「毎日、必ず」となると難しい。虎番は〈大所帯〉でチームプレーなので、できなければ煩く言い続けた。見て見ぬふり、イイ先輩ぶるほどの無責任はないと思っていたので。このご時世、ウケないと言われながら…。

 先日、安芸キャンプを視察した阪神オーナー藤原崇起はザ・リッツ・カールトンの創業者にまつわる話を引用し、若虎にハッパをかけたけれど、そのリッツで営業統括支配人を担った林田正光の著書に『人生は「挨拶の3秒」で変わる』『ご挨拶の法則』がある。

 〈挨拶はその人のすべてを物語る〉〈挨拶を大切にしていない人は、本質的に人間関係を大切にしようとする気持ちの少ない人〉-そんなことが綴ってある。

 「なんだ、この球団にはろくに挨拶もできん者がいるのか」

 金本政権時代、安芸へやって来た同業他社の大ベテランがそう憤っていたことを思い出す。数年前に退職されたその方は長嶋茂雄ら球界の大物とも親しい大御所。当時の阪神球団に流れる芳しくない空気に触れ、「これはいかん」と金本体制に警鐘を鳴らしていた。

 「ガラッと体質を変えるのは本当に難しいんよ」。「超変革」を大スローガンに掲げた金本だけど内心ジレンマに喘いでいた。

 「古臭いな…」と思われるかもしれないが、健全な組織運営は健全な挨拶から始まると僕は信じている。声の大きな人が全ていい人間だとは思わない。声のデカいデリカシーのないオッサンもいるので、谷本の言い分に、僕は「若い人に…」を加えたい。声の大きな若い人に悪い人間はいない、と。

 谷本の話を聞いていると、金本の「超変革」を受け継ぐ意志を感じる。挨拶くらい…ではなく新田のように健全な挨拶ができる組織であれば…お節介ながら思う。

 前述した林田の著書には「挨拶であらゆることが好転する」とも書いてある。ちなみに阪神では新田からも若い虎番からも「彼の挨拶は素晴らしい」とよく聞く。彼とは…近本光司である。=敬称略=

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