小園も奨成も7時半から
【11月14日】
西武キャンプにお邪魔した後、日南の天然温泉へ立ち寄ると、佐々岡真司とばったり出くわした。当然、互いに真っ裸である。鯉の新監督は歳も歳だし、もっと弛んでると思っていたら(失礼)…。 上半身のゴツさはハンパなかった。眼鏡なしに生活できない僕は風呂場で人の顔が判別できない。胸板の分厚い大きな男が至近距離で「おう!」ときたので、ひっくり返りそうになってしまった。
ここは昔からカープ選手に馴染み深い湯で、僕が最初に浸かったのは20年ほど前。90年代のカープで4番を張った(同い歳の)江藤智に連れられて、初めてプロ野球選手の裸を目の当たりにした。
この下半身、この腕っぷしでシバかれたボールはどこまでも飛んでいくやろな…そう言うと、2度本塁打王に輝いた江藤は笑っていたが、この世界のトッププレーヤーはまずもって、裸が違う。
これまで多くの選手の裸を見てきたけれど、どうだろう…〈取材史上最高〉は、やはり鉄人、バリバリの頃の金本知憲か。余暇を削ってウエートトレーニングに励み地道に築いた鋼の体は、か細かった新人時代とは別人になった。
「俺がルーキーか2年目のオフに、広島の町で餅つきか何かのイベントがあったんよ。そこで江藤が大きな臼を軽々持ちあげているのを見てさ。こんなヤツに勝てんわ…って思ったのを覚えてるよ」
かつて金本はそう語っていた。
「はい、7時半からウエートトレーニングをやっています。小園も(中村)奨成も…。コーチも7時半から付き添っていますよ」
早朝目覚めるオッサン記者はまず散歩して、風呂に入って…そんなルーティンで過ごすのだけど、7時過ぎに宿舎を出る若鯉を見掛けたので、チーム関係者に確かめるとそういうことだそうだ。付き添いの一人、来季から1軍バッテリーコーチを担う倉義和は言う。
「7時半から一緒に(ウエートトレーニングを)やります。趣味?いえいえ。一方的に『お前やれよ』というだけじゃダメかなと思って。僕の見てきた限り、トレーニングをしっかりやる人間はケガに強いし、選手寿命も長い。やり方はしっかり教えないとダメですけど、ウチは強制ですよ。ホークスもそうでしょ。丸、鈴木誠也はもちろん、新井(貴浩)もしっかりウエートをやってましたから」
球界にはウエートトレーニングをやらない一流もいる。イチローしかり…。それを前述のチーム関係者に問うと、こう返された。
「『イチローさんはやらなかったでしょ?』と言う選手、確かにいます。やってないことが一人歩きしてますけど、あの方も若い頃は7~8年ずっとやってました。そもそも、その選手、自分がイチローさんと同じ肉体だと思っている時点で間違ってますよね」
阪神はウエートは自主性に委ねられる。〈個々〉がどんなアプローチで強くなり、故障を予防し、選手寿命がのびるのか。どうぞご自由に…ではなく、コーチ陣、トレーナー陣が寄り添うことが「自主性」の鍵になる。=敬称略=