楽しくやり切るメンタル

 【11月11日】

 宮崎でこの原稿を書いている。巨人、西武、そしてカープ…できるだけ他球団のキャンプを巡って虎を考察できれば…。そんな思いで高知を離れた。書き手も井の中の蛙にならぬよう、外気を吸う。

 当欄を書くようになって毎年この時期に宮崎へ来る。目的は前述した通り。虎の近くで虎を書く以上に虎が見えることもあるので、いつも有意義な出張になる。

 ここ3年、王者カープをよく取材させてもらった。度々書くけれど、当たり前のように主力が参加するのがカープの秋季キャンプである。秋の日南で丸佳浩によく話を聞かせてもらった。主力中の主力であった彼だけど、秋はゆっくり…なんて概念はなかった。

 どんだけバット振るの?見ているこちらが吐き気がするほど、丸は自身のスイングを体に染みこませていた。秋といえば若手。そんな虎の常識はここにはない。今回も侍組とリハビリ組を除くメンバーが、佐々岡新体制のもと、温暖な日南で鍛錬を積んでいる。

 どうしても感傷に浸るのは、菊池涼介のこと。彼がもうここへ来ることはないのか…いや、またいつかきっとここで…。そんなことを考えると、複雑な思いがある。

 プレーはいうまでもなく僕は菊池の人間性が好きで、カープの取材現場にくれば、まず菊池を探していた。カープが菊池抜きで戦う…今はなかなか想像できないけれど、そのあたりも、新監督の本音に迫ってみたいと思っている。

 守備力以上に彼の持つ強靱なメンタル…もしそれが抜けた場合、その大きな穴をどう埋めるのか、関心がある。かつて雑談の中で菊池に聞いたことがある。どうやって精神力を鍛えているのか。僕が知らないだけで、よそで修行してたり?すると、彼はこう答えた。

 「僕はそんなに気にしないんですよね…。おそらく、もともとメンタルがまあまあ強い方だと思うんです。精神力を鍛える為に色んな修行があると思うんですけど、僕の場合、これ!というものはないんですよ。きつい練習、きついトレーニングをいかにリラックスしながらやるか。キツいことをいかに楽しくやりきるか。やっぱりキツい状況に立ったときに、それを乗り越えるには、違う意識をどこかに持っておかないといけないと思うんですよね」

 練習が過酷なら顔は歪む。笑顔でこなすには、それこそ過酷な修行が要りそうだけど、菊池の発想は、厳しい練習を笑顔でやりきることで不動心が備わっていく…というもの。僕はそう理解する。

 現在、世界と戦う侍ジャパンの背番号4に米国市場は注目している。まだまだ進路は分からないけれど、菊池が海を渡れば、それは夢が広がる。彼なら並みいるツワモノに混じっても、そいつらを凌駕できる。技術だけじゃない。あの無類のメンタルは、カープに限らず、後進の手本になると思う。もちろん、矢野タイガースでも。

 あいつは虎の菊池だな。そう呼ばれる力を発掘できれば…。また安芸へ戻り矢野燿大に若虎の現在地を確かめてみたい。=敬称略=

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