鳴尾発…自主性の秋

 【10月31日】

 「今、どこ?」。金本知憲からLINEがきたのは三日前のことだ。夜9時の着信に1時間ほど気付かず、スルー。折り返してみると、西宮市内の馴染みの料理店にいるというので、向かった。

 いつも通りといえばそうなんだけど、今回も野球の話が9割。阪神タイガースの…というよりも野球観や練習姿勢の話である。こちらとしては勉強させてもらうのだが、ふと思い出したのは、金本の監督就任時にぶつけてみた話だ。

 当方「プロ野球選手というのは自主性の塊(かたまり)でしょ」

 金本「俺は自主性を信じない。20数年間プロ野球の世界にいて感じたこと、その答えだよ。考えてみて。俺も含めて、みんなそうなんだけど、結局人間は楽(らく)したい生き物なんよ。だから、実績のない、若手の背中を強く押してやるのも、俺の仕事になると思う。何とかこのチームを底上げして、勝たないといけないから」

 それが、4年前の秋のことだ。

 読者の皆さんは昨日のデイリースポーツの「矢野語録」を読んでフシギに思わなかっただろうか。

 監督として2度目の秋季キャンプで、注視したいところは?

 キャンプ地の高知に入り、虎番記者にそんなことを問われた矢野は、こんなふうに答えている。

 「こいつ気合入ってるなとか、こいつそうでもないなとか。内に秘める者もいるし、タイプによって表現しやすい者もいると思うけど、見ていたら分かると思う。走り方一つ、ボールの追い方一つでそういうものは感じ取れる」-。

 「実りの秋」といわれる、若手中心のキャンプで「気合入ってない」選手がいるのか?そう感じてしまうのだけど、阪神に限らず、現実に「いる」のかもしれない。

 だからこそ、矢野はこうも付け加えている。「俺自身が引っ張る部分も必要やと思うけど…」。

 取材場所に縛られない当方はキャンプインの安芸へは行かず、鳴尾浜で居残り組を取材した。10時開始の〈鳴尾浜キャンプ〉に開門を待って並んでいるファンがいるのだから、有り難い球団である。先頭で荒木郁也、伊藤隼太、原口文仁がグラウンド入りし、右太腿を痛めている糸原健斗らリハビリ組が続く…計16人のメンバーだ。

 「おう、風!安芸へは行かんのか?」。2軍監督の平田勝男が手招きするので、三塁ベンチの傍らでしばし話を聞かせてもらった。

 「きょう10時開始だけど、ほとんどの選手が8時から来てトレーニングとかケアとかしていたよ」

 ほう…。それ、自主性ですね?

 「それは自主性ではなく、準備だよ。サラリーマンだってスキルアップの為に早く出社したりするだろ?当然のこと。昔よりも(球団が選手を)見切る期間は早くなっているよな。3~4年ダメなら終わる世界。自主性というのは実は厳しい言葉だということ。皆、それは理解していると思うよ」

 平田によると、朝一番、特打を申し出てきた選手がいたという。「(練習が全て)終わってから打たせてください」。これは自主性…原口文仁である。=敬称略=

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