それでも「自主性」でいこう

 【10月13日】

 阪神タイガースの19年シーズンが終わった。土壇場の6連勝フィニッシュ、また、CSで粘り腰を見せたことでファンを喜ばせた。けれど、矢野燿大は自軍の脆さを噛みしめた1年だったと思う。

 開幕前、記者仲間の順位予想で僕は阪神を2位にした。阪神OBらからは「本音は下位だけど、忖度で上位に…」という声をよく聞いた。僕の場合、ガチの2位予想である。ちなみに、優勝予想はDeNA。カープを3位にし、巨人は4位にした。秋、春はできるだけ他球団のキャンプ地を巡り、オープン戦も他球場へ足を運んだ…その割にはホント見る目がない。

 なぜ、阪神を2位にしたのか。

 大前提は投手力である。群を抜くブルペン陣の力。P・ジョンソンの力量は未知数だったけれど、藤川球児のクローザー復活を条件に、虎の台所は潤う。そんな期待感を2月のキャンプ中に書いた。

 野手については、勝手に予想図を描かせてもらった。J・マルテはW・ロサリオのように失敗しない。近本光司はドラ1にふさわしい選手になる。木浪聖也は開幕から遊撃のスタメンを奪う。これらも全て沖縄キャンプ中に書いた。

 見る目どうこうではなく、「この選手は成功する」と書いて、その通りになれば本望。そのうえで「阪神上位」を予想した根拠は、矢野が掲げた「自主性」…少なくとも、僕がかつて担当した阪神や広島では聞き慣れないキャッチワードへの期待感であった。

 自主性……取りようによっては「自由」になりうる、危うい言い回しである。矢野の考えを推し量り、強制されずとも、後悔のない鍛錬でシーズンに臨んだ選手は、このチームに何人いただろうか。

 当方はメジャーリーグ取材の経験がある。スプリングトレーニング(キャンプ)から数ヶ月間べったり帯同したけれど、そこに「強制」はない。彼らの世界で「自主性」が成り立つのは、他国とは比べものにならない〈メジャー予備軍〉…その層の厚さ所以である。

 代わりは掃いて捨てるほどいるのだから、号令など不要。生き残った者がレギュラーを掴み、毎年異次元の淘汰が繰り返される。

 では、日本球界はどうか。阪神に限らず、それほど分厚い予備軍は存在しない。限られた戦力の中でペナントを勝ち抜くには、〈強制〉練習によるチーム全体の底上げが不可欠に…これはもう昔からああだこうだ理屈じゃないのだ。

 阪神の若手全員が〈キャンプで毎朝4~5時起きする〉鳥谷敬であるならば、「自主性」によるチーム強化は成り立つだろうけど。

 「最終的には自分自身しかないと思う。苦しんで、苦しんで、苦しんで、今の自分がある。苦しかったけれど、負けたくないという気持ちのほうが強かった」

 本紙評論家・新井貴浩の言葉である。鳥谷が去る阪神においても当方は「自主性」の尊重に賛成である。但し、そのキャッチワードが成立する気概を全ての選手が持てるかどうか…もし、成立しないと矢野が判断するならば、堂々と方針転換してほしい。=敬称略=

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