丸の意図した先制併殺打

 【10月10日】

 東京ドームのサロンで夕食を済ませ、追加でコーヒーを頼んだ。試合前のことだ。「こちらで飲みます?持ち帰ります?」と、女性スタッフから聞かれたので、「ここで飲みますよ」と答えると…。

 「では、203円です」

 「ん??『では…』とは?」

 「お持ち帰りの場合、200円なんです」

 あぁ、それニュースで見たぞ。消費増税によるアレだ。イートインスペースで飲食する意思があれば税率10%。持ち帰る意思があれば軽減税率8%。このサロンの隣にプレスルームがあるのだけど、そこへ持ち運べば、3円の得…。数字が苦手な当方には、どっちがどっちだか分からなくなる。

 丸佳浩が併殺打に倒れても、巨人軍のベンチは大いに賑やかだった。ややこしい?こっちはどうやら、ややこしくなさそうだ。

 両軍にとって先制点が意味するものは大きかった。巨人は欲しかった先取点を手に入れて大いに盛り上がり、結果的に、阪神にはダメージが残る1失点になった。

 初回である。先頭・亀井善行が阪神先発の高橋遥人から二塁打を放ち、坂本勇人が単打で続く。無死一、三塁の場面で、前夜決勝アーチの丸が打席へ向かった。

 いきなり3ランはやめてくれ…やられた側の記憶は薄れないもので、どうしてもネガティブに構えたのだが、結果は遊ゴロ併殺打。

 ああ助かった…そうじゃない。 丸は1ボールから、深い守備隊形の内野へ〈狙い打った〉ように転がし、三塁走者を迎え入れた。

 「あの場面は、ボール球を振らされての空振りだったりとか内野フライが一番ダメだと思っていましたから。狙ってというと語弊があるけど、最低限あの形でもいいかなと思って打ったら、本当にそうなった…という感じですかね」

 ゲームセットから1時間。私服でロッカーから出てきた丸に〈先制打〉の意図を問えば、そう語った。阪神にとって怖い怖い丸だけど、実は、レギュラーシーズンの終盤は苦しんでいた。丸の9月の月間打率は・222。もちろん阪神ベンチにそんなデータはある。だからこそ初戦初回の被弾は痛かったし、逆に丸にとっては浮上のきっかけになるインパクト十分なパフォーマンスになったはずだ。

 丸はまだ自身の状態が全開か否か、手探りじゃないのか。そのあたりを梅野隆太郎に聞けば「いや…丸さんはもう完全に戻っていると思います」と言った。

 「試合を待つ間にいろいろ考えてしまうのも人間心理のアヤだ。ここで負けたら優勝は無になる、といったマイナス思考が膨らむ」

 日経新聞のコラム「悠々球論」で権藤博が、中10日でCSファイナルSを迎えた巨人軍の心理をそんなふうに書いていた。

 やや低調だった丸にとっては、ウェイティングの10日間がオアシスになった…かもしれない。だとすれば、返す返すも初戦の1発が…いや、前を向く。東京ドーム内でGを一つ食えば3勝の得…なんてないのだから、きょうからまた全力で一つずつ…。=敬称略=

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