「セクシー」の言葉を待つ

 【9月6日】

 旧知のアナウンサー石橋真がキョロキョロしていた。試合直前のマツダスタジアムである。RCC(中国放送)でベンチリポートを担当した石橋は「え?嘘でしょ」と、信じられない様子だった。

 ベンチリポートとは球場の通路でパイプ椅子に座り、ゲームセットまで小型のモニターを見ながら…という〈裏方〉だけど、この日はプレーボールを待たずして、三塁側の喧噪が耳に入ったようだ。

 「ソラーテ、本当に帰っちゃったんですか?昔、『神のお告げ』だと言って退団した外国人選手が阪神にいましたよね?今回は『モチベーション』ですか…。でも、それ…本当に本当なんですか?」

 カープ実況に携わって20余年、大ベテランの石橋は「広島の助っ人では、過去に聞いたことがないですし」とキョトンとしていた。

 こっちだって「ウソプ~」と言いたい。でも、この耳で、しかも阪神球団本部長・谷本修の口からその事実を聞いてしまったので、ジョークで済まなくなった。

 詳細は番記者の原稿を読んでいただくとして、当欄も前代未聞の〈職場放棄〉について書く。

 モチベーションが上がらない?それ、言っちゃったの?野球選手に限らず、誰だってそんな日はあるよ。体調や精神が病まずとも、ヤル気スイッチが入らないこと、皆さんも経験があるでしょ。

 思うようなポジションを任せてもらえない。上司から口うるさく諭される。面倒な雑用が回ってくる…それでも、グッと辛抱し、心身を奮い立たせる。だって仕事なんだもん。プロなんだもん。それ以前に、オトナなんだもん。

 行き着くところ、そんなレベルの話に思えてしまう。

 プレーボール10分前に我々の囲み取材に応じた谷本は「大激震ではないです」と繰り返していたけれど、よもやの事態に、当然だけど、歯切れは良くなかった。

 本紙カメラマンによれば、滞在わずかで広島を離れたY・ソラーテは夜7時前に新神戸に到着。フラッシュに目を背け車に乗り込んだそうだけど…。どうも、このオフは腑に落ちないことが多い。果たして首脳陣の配慮が足りなかったの?フロントの不手際なの?取材が行き届かないうちにこうだと断言できないが、ソラーテが職場において「オレはモチベーションが上がらないんだ」と言ったとしたら、彼への信頼も期待も「閉店ガラガラ」である。それにソラーテと入れ替わりで登録抹消された俊介の気持ちはどうなる?

 「カントリーは素晴らしい心の持ち主でした。助っ人という同じ立場でジョンソンに対しても『ダメなものはダメだ』と叱ったこともありました。僕も晩年はカントリーとファームで長くやりましたけど、『チームのためなら』と、全然腐ってなかったですし…」

 カープコーチ広瀬純は昨季限りで引退したB・エルドレッド(愛称カントリー)をそんなふうに語る。羨ましい、和の心である。

 この「乱」に対する判断はソラーテの言い分を聞いてから。彼の言葉を待ちたい。=敬称略=

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