甲子園のスターに負けたくない
【8月14日】
東京ドームでKOされる吉田輝星を見た。初回に先頭打者弾を含む2被弾するなど、計6失点で3回もたず降板。昨夏の甲子園を沸かせた100回記念大会のスターがプロの壁にぶち当たっている。
「昨年にしても、吉田輝星投手は大会前はそんなに知られてなかったわけでしょ。今年も何人か出てくるんじゃないですか?」
先日、虎番が阪神球団本部長の谷本修に「今年は昨年ほど沢山スターがいませんもんね…」と振ると、谷本はそんなふうに答えた。
第101回、夏の甲子園の話題である。
確かに、そうだ。昨夏、大阪桐蔭の春夏連覇を想像するファンは多かったかもしれないが、決勝の相手が「金足農になる」と想像したファンは少なかったと思う。吉田輝星という右腕が一躍スターダムにのし上がり、ドラ1でプロ野球に入る-。そんな想像を、少なくとも、僕はできなかった。だから、高校野球は面白いのだけど。
「自分、小っちゃいときから、どれだけ大きい舞台へ急に出されても、緊張しなかったんです。それが普通だと思っていたんですけど、周りからすればそれが異常なことだということに気づかされて……そういう気持ちの強さは元からありましたね」-。
今月号の雑誌Numberで表紙を飾る輝星クンは「甲子園旋風録」なる同誌のスペシャルインタビューで、そんな話をしている。
先天的な「気持ちの強さ」…ツワモノだらけのプロ野球界でも、羨ましがる者は多いと思う。
「甲子園で活躍した高校生には負けたくない。今の段階ではレベルに差があるので頑張ります」
これは秋山拓巳の10年前のコメントである。第91回夏の甲子園で二回戦敗退ながら名を売った秋山
は阪神入団会見でそう語った。
秋山がいう「甲子園で活躍した高校生」とは、実は沢山いる。91回大会はタレント揃いで「レベルに差がある」とは菊池雄星を指していたはず。ほかにも堂林翔太や今宮健太、大瀬良大地…学年は下だけど、西川遥輝や吉田正尚、山崎康晃ら、あの夏を彩ったのはプロでも名の知られた面々だ。
ライバル心を燃やした甲子園のスターたちと自分の現在地を、秋山はどう見ているのだろう。この夜先発した彼のルーキー年の輝きを知るファンは、2年前のカムバックを喜び、まだまだ、向こう10年の躍動も楽しみにする。僕もその一人だし、「91回大会」のスター達には負けて欲しくない。
秋山とは深い交流はないんだけど、勝手に親近感を持っている。というのは…当方は毎年1月に必ず香川県の金刀比羅宮を参っているから…。そのいきさつは後日書かせてもらうけれど、秋山の出身地・丸亀とは目と鼻の先であり、彼は同宮の名物1368段の石段で自主トレをやったこともある、
「心の強化です」。表舞台で勝てなかった彼が「こんぴらさん」を駆け上がるワケをそう語っていたことを思い出す。あの石段を踏みしめた者にしか分からないゴールは、まだ先にある。=敬称略=