負けてたまるか-近本の雪辱

 【5月22日】

 環境省が熱中症対策として日傘を差すように呼びかけた。日傘といえば昔から女性のアイテムだけど、同省は「男性も活用してほしい」と訴え、百貨店と協力してキャンペーンを実施するという。

 「やっぱり、帽子、要りますよね」。朝日放送のイケメンアナウンサー高野純一から声を掛けられた。虎の選手が屋外で練習を開始した14時頃、グラウンドレベルの気温は27度を超えていた。帽子を被って取材していたオッサン記者は高野アナに日傘を薦めてみた。

 「え??さすがに、それは…」

 日傘を使えば「暑さ指数」が最大3度も下がるそうで、原田義昭環境相は自ら日傘を差してアピールしていたが、高野はやはり「日傘男子」には抵抗があるようで。

 しかし、熱中症が深刻化する時代そうも言っていられない。〈日傘=女性〉の常識は3年後、5年後にはなくなり、高野も僕もフツーに日傘を差す日がくるかも…。

 「最も強い者が生き残るのではなく……唯一、生き残ることが出来るのは、変化できる者である」

 日傘談議でダーウィンの名言を持ち出せば仰々しいけれど、どんな分野も時代や環境に適応できない者は滅ぶ…はホントだと思う。

 ただし、昭和40年代生まれの僕は考え方が古臭いのか、変化が苦手…。昔ながらの風習、常識にこだわる頑固者であったりもする。

 この夜のカード、両軍ベンチにそんな僕と同い年が一人いる。ヤクルトヘッドコーチの宮本慎也である。この世界に身を置いたスタートも同じ95年。だから、勝手に親近感を抱くようになり、金本知憲の親友の方を通じ、話すきっかけをいただいた次第である。

 宮本に今の時代の若い選手との接し方、指導の方法について尋ねると、「難しさはある」としたうえで、確信をもってこう答えた。

 「こちらが今の子に合わせる部分も当然必要。ただ、プロスポーツ選手である以上、負けてたまるかという気持ちは一番大事だし、それは、やっぱり厳しさの中で出るものだと思う。プロ野球選手というのは、技術屋さん。体力面の練習は明るくやったほうがいいけれど、技術を身につけるときには突きつめてやらないと、本物の技術は身につかない。自分の中で、そこの区別はつけているつもり」

 負けてたまるか-。昭和人の僕が大好きな言葉である。そして、虎の若い選手で〈宮本好み〉を挙げるなら……近本光司だと思う。

 この夜、当欄はMVPに近本を挙げる。五回の好返球(詳細は番記者の原稿をどうぞ)に「負けてたまるか」のメッセージをこれでもかと感じたから。敗れた17日のカープ戦で彼の本塁返球が一塁側にそれたシーンがあった。雪辱の絶・好返球-そう映った。

 「試合でそれ(前回の返球)を意識すると、それに寄ってしまう…マイナス要因が増えてしまうので、練習で意識して、自分ができること、いいイメージを意識しながらずっとやっていましたよ」

 近本に聞けばそう語った。本物の技術を身につける為に彼が突きつめた成果だと思う。=敬称略=

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