耐えて夢を追う姿を

 【5月8日】

 カープOBの前田智徳が阪神ベンチへやってきた。「報道ステーション」の取材かな…なんて思っていたら、福留孝介と暫く話し込んでいる。個人的にこういう濃い2ショット、キライじゃない。

 若かりし日の金本知憲がその打撃を「参考にした」という、いわずと知れた天才・前田である。

 カープを担当した20年ほど前からの旧知。声を掛けると…

 「あら、久しぶりです。今どんな仕事してるんですか?コラム?柔らかに頼みますよ。矢野さん、頑張ってらっしゃるので…」

 承知…というか、まあ、浮き沈みにかかわらず、夏まではアゲアゲで書くつもり。といえば、それ以降は?とツッコまれそうだけど窮地でも、失態を重ねても、矢野阪神と共に耐える、共に夢を追う筆でありたいと思っている。

 前田のプロ野球人生はそれこそ堪え、忍ぶものだった。右アキレス腱断裂、そして左アキレス腱の手術…選手生命を脅かす重傷に耐え、彼は打棒を究めたのだ。

 前田とのそんなやり取りがあって三塁ベンチに座ると、取材に来たタレント松村邦洋から肩をたたかれた。「紹介します。生島ヒロシさんです」。存じあげ…過ぎております。この日、サンテレビの解説で神宮に来た田淵幸一が「生島企画室」(生島が会長を務めるプロダクション)所属だそうで、生島も虎ベンチに〈ご挨拶〉。名刺を交換させていただきました。

 生島ヒロシといえば、今年3月出版した著書『どん底に落ちてもはい上がる37のストーリー』(ゴマブックス)が好評である。僕も拝読したが、自分の人生と重ねれば、引き込まれていく作品だ。

 人生何をやってもダメな時期はダメだし、うまくいくときは不思議なくらいにとんとん拍子で話が進む。やはり、ダメな時期をどう過ごすか、どう耐えるかが、その後の未来を大きく変えると思う。私はよく「耐えて夢を追う」と言っている-。(原文まま)

 前田を思い…いや、今この書を読めば、猛虎の苦労人を思う。

 4時間50分を超えた12連戦のラスト。色んなことがあったけれど振り返れば、糸井嘉男の先制打、大山悠輔の技あり打、梅野隆太郎のヘッド…全てかみ合った初回の先制劇は記憶に留めておきたい。

 中でも特筆は、2番で先発した上本博紀の〈繋ぎ〉。近本二塁打の直後に右前打し、糸井への2球目に今季初盗塁。開始5分で無死二、三塁の局面を作り上げ、ヤクルト21歳の高橋奎二をたたみ掛けた貢献は、効果絶大だった。

 一年前の5月、上本は負傷でこのチームに居なかった。一昨年の5月も負傷で戦線を離れた。リバイバルを期す19年。彼にとってはまだまだ不本意だと思うけれど、当欄では何度も書いてきた。阪神は上本のチームになるべきだと。

 苦しい時を幾度となく耐えた者は逞しい。生島の著書にあるように、窮地をどう過ごすか、どう耐えるかが未来を変えると思う。

 「耐えて夢を追う」-。矢野阪神、そして、上本のこれからを共に追っていきたい。 =敬称略=

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