評価されるべき「ミスの後」

 【5月6日】

 皆さん誰か恨んでるの!?そう疑いたくなるほどの反応だ。当人は真剣だから笑えない…おととい当欄で書いた〈恨みを買う者は報いを受ける〉ネタ3連発である。きのうもLINEが数件あった。

 匿名にしないと、リアルにヤバい。それくらい名のある球界の人間が「(恨んでいる人間に)復讐してやろうかな」というのだ。あのね、だから書いたでしょうに。可哀想な人間だと思って「放っておくこと」だと…。「争わないこと」がアナタの為じゃない?

 その者から「許せない人、いないんですか?」と聞かれたので、「いませんよ」と返事すると「本当ですか?」と疑われた。「だって相手にするだけ時間の無駄」といえば、「確かに…」と納得していたような、いなかったような。

 当欄でお伝えしたお寺へ行ってその「恨み」を住職さんに告げればどうでしょう。その住職さんが解決してくれるかもしれません…といえば、その彼は「自分は根に持つ人間なので」と笑っていた。

 根に持つ-の意は対象が「人」だけど、仕事に対して〈粘着質〉であることは、プロ野球選手にとって必要な〈体質〉だと思う。

 悔しさを引きずらない。気持ちを切り替える。敗戦の後、ミスの後、そんなフレーズを選手からよく聞く。だけど、責任感の強い者ほど、根っこでは、みんな引きずるもの。ミス??そんな終わったこと知らねぇよ!なんて、すぐに割り切れる選手っているのか…。

 この夜、追撃の犠飛を放った大山悠輔である。彼の失策の話は、きのう書いた。ミスをしたその日のうちに適時打を含む2安打し、取り返していたが、ミスをした大山が翌日どんな気持ちでゲームに臨んでいるか注目していた。

 打撃と守備は別物…ではないと僕は思っている。今季は開幕から全試合4番を任される大山だけど守りの堅実な彼が〈意外にも〉既に5つ失策を記録しているのだ。

 「阪神の4番」というポジションがもたらす重圧。好機で打てなければ、守備で引きずってしまう…本人は否定するかもしれないがなくはないと思う。

 そんな視点のデータがある。

 デイリースポーツ記録部の調べによると、大山がエラーした翌日の成績は5試合で(1)4月2日(対巨人)3打数0安打(2)4月3日(対巨人)4打数0安打(3)4月14日(対中日)4打数2安打(4)4月30日(対広島)5打数2安打…そして(5)この日のヤクルト戦が3打数で1打点。

 もちろん無失策に越したことはないが、野球は失敗が必ず出る競技。だからこそ、評価されるべきは〈ミスの後〉である。変な書き方になるが、大山は失敗をポジティブに引きずればいいと思うし、気持ちを切り替えずに失策翌日に結果を残せば、彼のメンタルはどんどん「阪神の4番」にふさわしいそれになるような気がする。

 阪神で最も長く4番を務めた金本知憲は失敗や敗戦を翌日まで引きずり、その悔しさを糧に結果を出し続けた男である。大山も是非ともそういう4番であって欲しいと願っている。=敬称略=

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