変化球を投げるつもりは…

 【3月21日】

 18歳と39歳だからその差は21。試合後、ロッテの黄金ルーキーと阪神の百戦錬磨に話を聞くと、両者ともどこか嬉しそうだった。

 2安打に好守、そして盗塁…。幼いころから馴染みだったユニホームを相手に躍動した藤原恭大は最後の打席で初めて首を傾げた。 3打席3出塁で迎えた4度目のアットバットは七回2死無走者。対峙するマウンドには「ずっとテレビで見ていました」(藤原)という能見篤史が立っていた。

 直球を2つ見逃し、簡単にカウント0-2となった3球目。キャッチャー坂本誠志郎のサインに、能見は小さく首を横に振った。

 藤原「最後は変化球がくるかなと思っていました。あそこは、低めの変化球は見逃して、カットできるボールはカットして…と考えていたのですが、3球まっすぐ勝負とは思わなかったです」

 一塁ダッグアウトで初対面のオッサン記者が挨拶すると、18歳は「よろしくお願いします」。大阪桐蔭時代に何度も聞こえてきた、評判通りの礼儀で取材に応じてくれた。大阪府豊中市出身の彼にとって、ボーイズ時代…いや、そのずっと前から身近だった阪神タイガースである。物心ついたころから甲子園のマウンドでバッタバッタと三振を奪っていた背番号14の勇姿は目に焼き付いているはず。

 能見が最多奪三振のタイトルに輝いた12年、藤原はまだ小学生。それでも、類い希な野球少年にとって同年のタイガース開幕投手は鮮烈な輝きを放っていたに違いない。右打者へのクロスファイア、針の穴に糸を通す左打者への外いっぱい。能見が「原点」と位置づける球のイメージは、テレビの中の残像で染みついていたと思う。想像の世界がリアルになった、その軌道について聞いてみると…。 藤原「能見さんのまっすぐは、やっぱりコントロールがずば抜けているというか…。投げたいと思うコースに絶対に投げてこられるので凄いなと感じました」

 藤原を3球三振に斬った、片や能見である。帰阪の途につく彼にその場面を振り返ってもらった。

 能見「最初から変化球を投げるつもりはなかったですよ」

 ラストボール、坂本のサインに応じなかった理由をあえて問うてみると、社会人出身、プロ15年目の矜持をサラッとにじませた。

 能見「20歳以上、離れているんですよ(笑)。変化球は…」

 そこは分かってくださいよ-とばかり、ポーカーフェースを崩した。では、「納得の3球」だったのかと聞けば、こう語る。

 能見「(3球の中で)2球目くらいじゃないですかね、ボールからボールっぽい感じの球は」

 駆け引きもあるので、100%本音は引き出せないけれど、21歳差のマッチアップは、こちらが勝手にワクワクさせられた。阪神がドラ1で指名した由縁もあって。

 能見「藤原?雰囲気はすごくあります、本当に。足も速いですしね…。また6月に対戦がありますから。いま、落ちるボールは見せたらダメです(笑)。シーズンにとっておかないと…」=敬称略=

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