3秒で部下に好かれる方法

 【3月20日】

 甲子園のお膝もと、兵庫県西宮市の公立小学校がこの日、卒業式を迎えた。全41校(西宮市役所調べ)の児童が陽春に祝福され…というわけで、鳴尾浜球場には平日なのに大勢の子供の姿があった。

 卒業式も昼までだし、下級生はお休み。もしかしたら…。「根尾を観に行こう」ってなところか。

 門出を祝ったのは若虎も同じである。阪神の2軍がウエスタン・リーグ開幕の中日戦を勝利で飾った。平田勝男がファーム監督として14年9月以来1636日ぶりの白星。板山祐太郎からウイニング球を受け取ると「このボールに根尾のサインをもらってきてほしいよ」と報道陣にお約束のジョークをかまし、快晴の鳴尾が和んだ。

 柔らかいな…。前回、前々回の平田2軍政権を知る者なら、そう感じるはずだ。何が柔らかいって若い選手たちへの接し方である。

 「俺の昔のことを知っている陽川とか横田は『怒らなくなった』と感じていると思うよ。『俺も気が長くなっただろ?』なんて聞くと、横田は『考えられません…』って言うんだから(笑)」

 昭和の言い回しをすれば「鬼の平田」だった。例えば、大学や社会人との練習試合で不格好な試合で負けると、かつての平田は「ずっと走ってろ」と言ったきり、いつまでも終了の合図はなかった。

 「2軍なんだから、嵐や干ばつに耐えられるだけの技術とメンタルを持っておかないといけない」

 これぞ、平田流…だった。言っていることは間違っていない。ただ、この信念を前面に押し出してしまうと、今の若い選手には…と案じていたら、平田は方法論のアップデートを大胆に試み、3度目の2軍監督を担っていたのだ。

 「昔は頭ごなしなところがあったんだけど、今は選手に話を聞くことにしているんだよ。ミスをしたときそのプレーの根拠を聞いてみて、裏付けがあればオッケー…というふうに。俺も色々と経験してきてさ、色々と考えるよ」

 今週号の週刊文春に『精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法』(文藝春秋社)という、精神科医・伊藤直の書籍が紹介されている。伊藤は著書でこう語る。

 「人間は人のことを好きになると、相手の意見や指令を肯定的に捉えます。好かれることによってこちらの言うことを『良いもの』として好意的に受け取ってもらえるのです。上司と部下の関係においても同じで、多くの部下にまんべんなく好かれる上司が率いる組織はうまく回ります」-。

 平田が意図的に選手たちから好かれようとしているかどうか、分からない。でも、前述のようなコミュニケーションは〈好意〉を呼ぶだろうし、それが〈頭ごなし〉よりも建設的な方法論であれば、平田は過去のそれを喜んで捨てるだろう。ただし、平田は僕にこう付け加えることを忘れなかった。

 「野村克也さんが『人間は楽をしたい生き物』だと言っていた。選手が自主性を甘い言葉だと勘違いしていたら痛い目をみるから。そこはしっかり理解してもらえれば…と思ってるよ」=敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス