マルテに「神のお告げ」を
【3月19日】
広陵、習志野、桐蔭学園…肌寒い雨の聖地に球児の掛け声が響いた。何か景色が違う。そういえば今年はあの高校がいないんだ…。
あれ?いつも開いているドアが閉まっている。こっちもダメか…なんて、エエ歳したオッサン記者が甲子園でウロウロしていると、阪神球団の広報が「こっちのドア開けます」と手招きしてくれた。
阪神ファームの開幕戦を取材するため鳴尾浜へ向かったのだが、あいにくの天気で早々に中止が決定。アテが外れてしまった。若虎が甲子園の室内練習場で調整するというので、のぞきに行ってみると甲子園球場の装いは、23日に開幕するセンバツ大会一色だった。
あれ?根尾ギャルか…。
球場正面でファンらしき女性が数人、入り待ちをしている。大阪桐蔭不在のセンバツだけど、この日、あの根尾昂が〈がい旋〉。平田阪神のオープニングゲームは中日戦だから、根尾も若竜の一員として聖地へ〈帰ってきた〉のだ。
「キャンプではとにかく慎重に慎重に…という調整でしたね」
根尾番で帯同する中日スポーツの記者が教えてくれた。
右ふくらはぎの肉離れ…。
ドラゴンズ首脳陣が慎重を期したのは、黄金ルーキーの故障箇所がココだったから、に違いない。
「一般的に、ややこしい箇所ではあるよ。後ろへはそうでもないけど、前へ歩く動作で負担がかかるところ。走るとなるとね…」
室内練習場で出くわした常川達三が教えてくれた。常川は元阪神のチーフトレーナーで現在は球団本部企画(医療)担当。虎番時代に度々取材させてもらった人だ。
「ベテランの選手がこの箇所を痛めて、それが原因で引退したりする。真弓(明信)さんがそうだったし、片岡(篤史)もここを痛めて苦労していたよ。一度痛めると再発しやすいところだから」
右ふくらはぎの痛みか…。
いや、根尾じゃない。阪神の新助っ人である。中日ファームが甲子園に到着する前にクラブハウスへ引き揚げてしまったジェフリー・マルテだけれど、僕の見る限り彼の故障は軽度ではなさそう。痛みを確かめるように通路で右足に重心をかける姿も痛々しかった。
マルテは失敗しない-。
日本野球をリスペクトする彼のスタンスに共感するし、〈成功〉を直感したから沖縄キャンプの終盤にそう書かせてもらった。3月の故障は想定外だけど、箇所が箇所だけに心配である。「開幕アウト」なんて書くと聞こえはネガティブだけど、それでいいじゃないか。旅路は随分長いのだから。
新助っ人のケガといえば、20数年前、マイク・グリーンウェルという元メジャーリーガーを取材した。彼はたった7試合で帰国、そのまま引退してしまった。「引退しろ、という神のお告げ」だとかで。その当時1軍トレーナーだった常川は「我々スタッフに優しい選手だったよ。自打球で右足の親指を骨折して、あっという間に帰ってしまったけど」と苦笑する。
今は休め…マルテにそんな〈お告げ〉があるといい。=敬称略=