根尾や小園より結果を…

 【3月9日】

 この日、鳴尾浜の公営駐車場が溢れかえっていた理由はお察しの通りである。「この時間(朝10時過ぎ)に制限して門を閉めさせてもらったのは初めてです」。球場警備員が教えてくれた。入場できないファンが公道に列をなし、車が並ぶ。そう、あの甲子園スターがここでデビュー戦…。いやぁ中日が羨ましい。昨秋ドラフトでそんな〈嫉み節〉を漏らした虎党も多いはず。でもね、当該球団にとっては重圧ですよ。球界の宝を潰しちゃいけないし、期待通り育て上げなければ何を言われるか…。

 「あれっ、お久しぶりです」

 鳴尾浜で荒木雅博と会った。彼は今季からドラゴンズ2軍内野守備走塁コーチに就任し、沖縄のファームキャンプで根尾昂を指導してきた。スーパー新人の隣にはいつも荒木。ここ最近、そんな写真や動画を見た読者も多いと思う。

 「孝介、どうですか?」

 荒木と少し話をしたけれど、やはり何年経っても、〈20年前のスーパー新人=同級生〉の居場所が気になるようで…。

 若き才能と指導者。前述したように、それこそ教える側にとってはプレッシャーでは?と察する。

 さて、そこで虎の話。デイリー読者の皆さんに聞いてみる。バレンタインデーにドラフト2位新人小幡竜平が安芸キャンプで掲げた今年の〈目標〉とは何でしょう?2月15日の紙面に小さく掲載したコメントなんだけど、これは彼が一流に成長した暁に必ず回想されるものだと思うので、あらためて紹介しておきたい。

 「根尾や小園より結果を出すことです」-。

 そんな小幡を預かるのは、新井良太。今季から2軍打撃コーチに就いた阪神の第93代4番である。

 「例えば、その選手が右投げ左打ちなのか、左投げ左打ちなのかによっても(アプローチは)違うと思います。現役のときからトリ(鳥谷敬)さんとよくそういう話をしましたし、(公私で慕う)井端(弘和=現侍ジャパンコーチ)さんからもそういう話を沢山聞かせてもらいました。選手には『試合で使える引き出しを多くしような』と話すのですが、僕の中にもそういうものはありますので、伝えていけたらと思っています」

 行間に滲む良太の信念は「すべて選手のため」。ぶっちゃけ、この世界を取材すれば保身や体裁が端々にちらつく指導者もいるのだが、兄譲りなのか、新井良太という人格には妙な雑念を感じない。指導歴は浅い。けれど、彼に備わる選手ファーストのコーチング、コンサルティング…これこそ低迷する虎に必要な人材だと感じる。

 「難しさ?それはめちゃありますけど、それ以上にやり甲斐のある仕事。打ってくれたら本当に嬉しいし、その嬉しさのほうが断然大きいですよ。バッティングって本当、難しい。選手個々によって絶対これが正しいと決めつけるのは違うと思っていますし、若い選手の可能性を少しでも広げられるようにと思って接しています」

 荒木と根尾。新井と小幡。師弟の歩みが楽しみだ。=敬称略=

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