「それまで」を意識せず

 【12月19日】

 今週号の「サンデー毎日」に北川悦吏子のインタビューが掲載されている。NHK上半期の朝ドラ『半分、青い。』の脚本を手掛けた彼女の発言をフムフムとたどりながら、もちろん、そうでしょうよ!と合点がいった下りがある。

 「それまでの朝ドラをまったく意識しないで書きました」

 そもそもタイトルが朝ドラ感をぶっ壊している。北川もボツを覚悟していたそうで「朝ドラ的には一番遠いタイトルだから絶対採用されないだろうと思っていたら通っちゃった…」なのだとか。

 今夏、NHKの広報マンのように『半分-』を度々当欄で取り上げた。だから〈朝ドラ仲間〉阪神園芸の甲子園施設部長、金沢健児から聞かれたことがあった。「次の『まんぷく』も見てる?」。実は第1話しか見ていない。(視聴率は順調らしい)。『半分-』は完走したのになぜ、次作は見ないのか。そのワケを聞かれれば、理解されにくいが、「それまでの朝ドラ」に戻ったから…と答える。

 実は、金沢から「『半分-』にはアンチも多い」と聞かされていた。ネット上にも北川脚本に対するネガティブな反応が溢れていたそうだが、それを聞いて余計に、僕はここで『半分-』を推した…なんて書くと、それこそ「あまのじゃく!」と反感を買ってしまうか。要は、北川のチャレンジが好きだったのだ。「それまで」(=安心感)への挑戦状に拍手を送り「どんどん壊せ」と、それこそアンチの多かったヒロイン楡野鈴愛(永野芽郁)に肩入れしていた。

 前置きが長ったらしくなった。

 何をするにも群れるのはラクである。出る杭はパワーが要る。誰かと肩を組み「それまで」と一緒にしておけば波も風も穏やかだが日々取材する阪神で「それまで」を眺めるほど退屈なことはない。

 第34代監督の矢野燿大は阪神タイガースの「それまで」を壊そうとした金本知憲の意志を継ぐという。「脱」ではなく「続」だと。

 今シーズン、矢野2軍を見るのが楽しみだった。「それまで」をぶっ壊した年間163盗塁に象徴される超積極野球は、ファームだから挑戦できた側面ももちろんあるけれど、アドバルーンを上げっぱなしにせず、最後までやり通した矢野のパワーに共感する。だから願うことがある、矢野には是非「金本を意識せず」オリジナルのドラマを描いて欲しいということだ。「それまで」いや、「前作」の踏襲も見たくない。アンチ上等で矢野色を貫いてもらいたい。

 矢野の言葉を紹介する。

 ファーム監督を担った今季、過去に仕えた監督のやり方を顧みたり、意識したことはあったか?

 「俺は俺だったかな…。『俺は俺』の中に色んな監督のものがミックスされてるんだけど、星野監督がこう言っていたから自分も真似てとか…それはなかった。何かを伝えるとき、選手が一番だと思ってるからさ。俺がこう言おう!とかいうよりも、その選手にどういう言い方をしたら、その選手が良くなるのかな…と思うから」。

 虎の次作?見たい、見たい。=敬称略=

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