世界記録を超えた夏

 【11月13日】

 タイガース原口文仁のご実家はデイリースポーツを購読されているという。感謝…と書きながら、少し気まずい気持ちにもなったりする。なぜって、僕がしつこいくらい阪神の正捕手は梅野隆太郎だと書き続けてきたからだ。ご家族の皆さんは、さぞかし、当欄に対していい印象がないに違いない。

 僕が原口の身内なら、この欄は読みたくない。近親者なら誰だってそうだと思う。ちなみに、梅野の九州のご実家はデイリーを購読していないはず。顧客優先を踏まえれば、この筆はアウトかも。

 さて、来季はどうなるのか。阪神のスタメン捕手争いである。

 先発マスクで100試合をレギュラーとするなら、候補者は何人いるだろう。いうまでもなく、捕手出身の虎将は彼らに対する評定が厳しい。僕のような一介の記者が何言ってんだ…と思われるかもしれないが、よほどのことがない限り当欄は来年も梅野を推すつもりだ。皆、頑張れ!の発想はオッサン記者は持ち合わせないので。

 「梅野=正捕手」を推す根拠は肩である。今風に書けば「梅キャノン」か。この武器が進化する限り、もしくは、これを超える新キャノンが出てこない限り、当欄は「梅野が正捕手」と書き続ける。

 あんた、キャッチャーのこと何も分かってへんのに、肩の強さだけでああだこうだ語るなよ-。

 チーム内や専門家の方から、そんな声が聞こえてきそうだ。

 「キャノン」が代名詞になった甲斐拓也が、なぜ日本一ホークスのレギュラーを勝ち取ったのか。「あそこまで極めればの話だ」とツッコまれそうだが、じゃ、現状タイガースの捕手で最も「甲斐キャノン」に近い男は誰なのか…。

 「いや、あの肩は正直びっくりしました。いい意味で裏切られましたよ。第2クールで、いきなりおい、どないしたん?っていう感じですわ。僕、実質、原口を指導するのは初めてなんで、安芸へ来てから彼と色々と話したんです。どういうふうなキャッチャーになりたいか、とか。まあ、ちょっと見ててください、面白いですよ」

 1軍の新バッテリーコーチ藤井彰人が「原口の肩」について教えてくれた。遅ればせながら安芸入りした僕は、「強肩発動中」と噂の原口をチェックしていきたい。

 次期オーナーが視察した紅白戦の結果は番記者の原稿をご覧いただくとして、僕はシーズン中、原口本人に伝えようか迷っていたことをきょうの締めに書こうと思う。

 肩ではなくバット、代打打率の話である。調べてみると、MLBでは代打30打席以上での打率が記録として残っているのだが、78年エド・クラネプール(メッツ)の・486が歴代最高なんだとか。実は、原口は代打30打席目となる7月20日DeNA戦で26打数13安打(・500)とし、この時点でメジャー(世界)記録を超えていたのだ。プレッシャーになるかな…と思って、本人には伏せていたが、今年の彼こそ「神様」の名にふさわしい打棒を誇っていた。

 原口が当欄を心変わりさせてくれれば、確かに面白くなりそう。=敬称略=

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