とても気になる安芸の一コマ

 【11月6日】

 「おう、どうしたんや。重鎮がこんな所へ集まってきて。何かあるんか?」。阪神球団顧問の南信男から、会うなり冷やかされた。同業他社の同世代と鳴尾浜球場で立ち話をしていると、それこそ本物の重鎮が不意にあらわれた。

 「顧問こそ、どうされたんですか?」

 「まだこっちへ来られてなかったから、平田監督に挨拶にな」

 南はそう言ってグラウンドへ足を運ぶと、新2軍監督の平田勝男と青空面会。球団本部の木戸克彦も交え、何やら話し込んでいた。

 「風さん、本当にきょうはどうされたんですか?」。デイリーの後輩記者からも不思議がられた。

 私、ここへ来ちゃ行けません?

 「いえ、いえ。きょうは鳴尾浜で何かあるんですか?」

 後輩クンがあまりに訝しがるものだから、目的の選手のほうを指さして、返答に代えた。

 この日は秋季キャンプ第2クール初日。安芸へ行く予定にしていたのだけど、気が変わった。高知へ飛ぶ前に背番号00、上本博紀を見ておきたかったのだ。ファンも気をもんでいることでしょう。僕も毎日、気になっていたので。

 紙面をめくれば、上本がFA権を行使するしないで熟考している-との情報が目に入ってくる。

 FA市場が賑やかになるのはこれから。丸佳浩や浅村栄斗、西勇輝らの去就に注目が集まるが、個人的に気になるFA選手はただ一人。上本のみである。

 鳴尾浜で上本の姿を見つけたのは、南と雑談した直後。縦じま姿を見る限り、とても順調そうだった。それでじゅうぶん、この日の目的は果たせたと思う。

 FAは選手の権利だし、行使についてあれこれ首を突っ込むつもりはない。まして、不確かな情報をここで綴るのも控えるけれど、書きたいことは書かせてもらう。 ここからは、当欄の独り言。

 僕が阪神球団のトップなら、何の迷いもなく、来季から上本を中心としたチームをつくる。新井貴浩を何度も例に出して申し訳ないが、チームの軸、拠り所になる選手は人間性も伴わなければならない。これは三連覇のカープを見れば、確信をもっていえること。阪神で誰がそうなるべき選手か。新井とはタイプが違えど、阪神球団は当然、認識していると思う。

 新監督の矢野燿大が就任発表の翌日、上本のもとを訪れ〈残留交渉〉に臨んだのがその証拠…だと僕は信じている。ただ、気になるのは、矢野新政権をバックアップするべき球団のマネジメント、危機管理、もっといえば、体制そのものが機能しているのかどうか。

 というのも、安芸で気になるシーンがあったからである。秋季キャンプ初日、僕は日本シリーズ取材先の福岡でこの一コマを目にして驚いた。なぜ、矢野阪神船出の場に球団トップである社長の揚塩健治が不在なのか…。虎取材に復帰したので、その理由はしっかり取材したい。金本阪神終焉のゴタゴタが尾を引いているようなら、「チームの宝」を守れるとは思えない。=敬称略=

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