金本はカメなんよ…

 【11月1日】

 朝イチで福岡をたち、昼から安芸で矢野阪神のキャンプインを取材する。夕方とんぼ返りで福岡へ戻り、夜はヤフオクドームで日本シリーズを取材…この日、他紙にそんな記者がいた。福岡~高知は飛行機で1時間足らず。とはいえまあまあハードな行程である。

 トシをとって腰が重くなった、とは言われたくないけれど、確かに矢野燿大が安芸で踏み出す一歩は見ておきたかった。僕はこのあと福岡から広島へ移動し、日本シリーズの決着を見届けて安芸へ向かう。鷹鯉の激戦を眺めながらやっぱり気になる「秋の安芸」。新監督の初日、その表情を想像しながら、この原稿を書いている。

 矢野は高知の宿舎で今回の日本シリーズをどう見るのだろう。安芸へ行ったら聞いてみたいが、捕手目線で解説を願えば、話題の甲斐キャノンしかり、継投、守備隊形…多角度な〈ヤノの考え〉が聞こえてきそうな頂上決戦である。

 捕手目線といえば、福岡で最も当欄を愛読(?)する人に話を聞かなきゃいけない。これまで2度ほどここに登場いただいたが、驚くほどよく読まれているので、今回もヘタなことは書けない。

 「おう、風ちゃん。大変じゃったな。ワシはよう分かるよ。あんたも辛かったと思う。あんたでも最後は厳しいことを書かざるをえない状況まで追い込まれとったよのう。苦しかったと思うよ」

 日本一へ王手をかけたソフトバンクのヘッドコーチ達川光男である。99年、カープ監督時代に取材した縁で今も会えば長話をする。

 「最後の最後」とは前阪神監督金本知憲のそれ。最下位は言い訳のきかない結果だけど、達川はどこか無念そうで、持論を語るうちにしんみりとこう切り出した。

 「金本はカメなんよ」

 へ??

 「ウサギとカメのカメよ。大器晩成ということ。カープ時代もドラフト4位で入って、最初は2軍暮らしで、前田、江藤らが先に1軍で出だして、金本は最後に1軍に上がったじゃろ。監督業も同じで、カメなんよ。契約年数の中でじっくり、ゆっくりやろうと思っとったんじゃないんかの。もう2年待ってダメだったら『センスがなかった』というけど、やめてしもうたけぇ、評価はできんよね」

 〈カープの足〉を封じる甲斐拓也の(秘)ネタでも聞かせてもらおうと思ったら、話題はかつてカープで共に戦ったかわいい後輩へ…。

 「金本体制で厳しくやったから若い子が力を出せなかったとかいう人がおるみたいじゃけど、それは後付けよ。負けたからそう言われるだけで、金本がやったことは間違いじゃない。いつ、その芽が出てくるか楽しみよ。矢野監督もそう言っとるじゃろ?」

 達川は「ワシもここで勉強させてもらっとるよ」と、ゆとり世代のトリセツについても語ってくれたが、その話はまた今度…。

 〈刺せる捕手〉甲斐が話題をさらうシリーズで〈打てる捕手〉会沢も奮闘した第5戦。矢野が掲げる理想の捕手像を聞くのも今から楽しみである。   =敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス