力の限り、できるだけ長く…

 【9月15日】

 広島から帰ってきた。当欄とは別の取材があって、2日間で旧知の広島関係者数人と会ってきた。ほとんどカープ3連覇の話題なんだけど、阪神のことに触れると、判で押したように、皆さん同じようなことを言う。いや、参った。

 「そろそろ、足を引っ張る人間がたくさん出てきてるだろ?」

 それぞれ言葉は違うけれど、およそ、こんな類である。しかも、皆さん、笑いながら言うので、こちらも返答に困る。なぜ、笑うのか。どうやら、その光景が手に取るように分かるらしい。カープだって、来年以降、負けが込めば、手のひらを返して、緒方孝市の足を引っ張る関係者は出てくるんじゃないのか。皆さんの答えは、これについても大方同じだった。

 「阪神は、多すぎる」-。

 さきほど「広島関係者」と書かせてもらったが、そこにはOBや球団…現役選手も含まれる。

 虎が121試合目で最下位に沈んだ。果たしてこんな窮地で「ガンバレ!」と、金本知憲の背中を押す阪神OB、関係者は何人いるのだろうか。僕はそこに関心がある。もう、重箱の隅をつつくレベルではないだけに、その気になれば叩き甲斐があるに違いない。

 舌鋒鋭くなられる方の言い分は「ファンの期待を裏切ってるんやから当たり前や!」ってなところか。その角度でいえば広島にあって阪神にないものって何だろう。コレ!とは書き切れないけれど、ヒントはカープOB会のトップ、安仁屋宗八にあるのでは…。安仁屋といえば、そう、シーズン前のペナント予想である。25年という長く険しい耕作期の間も、セ・リーグの1位予想は一度もブレずに「カープ」と書き込んできた。

 記者席の裏話を明かせば、デイリースポーツ評論家でもあるOB会長は、僕の隣席でよくカープに厳しい言葉を発している。劣勢なら、それこそ舌鋒鋭い。長年そうだけど、それでも、そこには必ず、愛情があるのだ。痛いほどの愛情が。

 じゃ、阪神の“ネット裏”には愛情がないのか。僕の主観でいえば“毒舌”で知られる岡田彰布の話を〈オフレコも含め〉聞いていると、金本への愛情が見える。ないようで、間違いなくある。

 でも、それが見えない人も確かにいる。手のひらを返す人が「多すぎる」とも、感じる。結果が全ての世界だから、金本も覚悟している。ただ、最近は残念な発言が多いとも感じるのだ。この日、公共の電波に「ため息」を乗せた人がいたと聞いた。誰に聞いても、「愛情」は感じなかったという。

 公共の媒体で発するなら自身の言葉に責任をもつべきである。勝者にすり寄る…誰だってできる。現場が順風なときも「セルジオ越後」でいられるか。いられなければ…これ以上は、やめておく。

 「力の限り、できるだけ長く一緒にやっていただきたい」-3年前、阪神オーナーの坂井信也が金本へ向けた言葉である。こんなときだから、厳しくも愛情を注げる阪神関係者が何人いるか…に注目したい。激痛を伴わない変革などホンモノではない。=敬称略=

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