『鯉のはなシアター』を観て…

 【9月14日】

 朝から広島で映画を観た。ずっと待ちわびとった作品じゃけ、ワクワクしながら観よったんじゃけど、劇場で泣いてしもうた。鼻すする音が恥ずかしかったけぇね。垂れるの我慢しとったら涙腺緩んで、何回も泣いてしもうた。

 冒頭から失礼…。広島で広島人と喋るとき、我流の広島弁が出てしまう。かつて3年間住んでいたもので…。この映画の感想は広島弁でしか語れそうにないけれど、ここからはこらえて書こう。

 『鯉のはなシアター』

 主演はチュートリアル徳井義実と、矢作穂香。草創期からのカープ秘話を映像化した作品で、全国公開はまだ先になるが、9月7日から広島で先行公開されている。

 この先、関西で上映されるようになれば、もう一度、観に行きたい。まだご覧になれない方も多いので、ここで中身をあれこれ論じることは控えるが、できれば阪神の選手にも観てもらいたい。阪神球団のフロントにも、阪神ファンの方にも是非、観てもらいたい。

 「プロ野球は親会社のためにあるんじゃない。ファンのためにあるんじゃ」-。

 劇中こんなセリフが出てくる。その通りだけど、その通りでもないし、でも、その通りであるべきだし…。長年この世界にいると、立ち止まって考えさせられる、琴線に触れるフレーズである。

 甲子園が泣いている。雨中詰めかけた4万超のファンが泣いている。今年の虎はホームゲームに弱く、これで甲子園で19勝32敗1分け。勝率は4割に満たない・373。一昨年に続き、聖地での負け越しが決まっている。是が非でも2位を…これは〈ファン以上に〉親会社の願いか。2位なら、CSファーストステージを甲子園で戦える。3位とは収益の差が億単位…どうにか2位を!綺麗ごとじゃない、当然の企業論理である。

 だけど、猛虎は甲子園で勝てない。ならば、CSでカープに雪辱するには、3位のほうがいい??そんな歪んだ目論みがせつない。

 カープOBの金本知憲に古巣を語らせると、「カープは10年かけて強くなった」という。以前も当欄で触れたが、ドラフト制が(逆指名などなくなり)公平になって「10年」という意味でそうだという。では、連覇前の10年間、カープの本拠戦績はどうだったのか。

 07年(5位)は広島市民球場で勝率・485。本紙記録部によれば、赤ヘルはこの年から25年ぶりVの16年まで、ホームで5割を切ったシーズンが5度もあったそうだ。それが、どうだ。この3年間マツダスタジアムでの勝率はすべて7割超え。今季ここまで38勝16敗2分け。ホームで貯金を「22」もつくっている。ひるがえって、阪神は甲子園で借金「13」…低迷中のカープ以上に深刻といえる。

 20年前にカープを取材し、カープを好きになった。近くにいれば心温まる、担当記者を応援団に変える空気感が確かにある。そんな愛すべき広島で育った金本は心で叫ぶ。「カープが10年でやったことを阪神は5年で…」。ファンを思い、そう決意する。=敬称略=

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