ハンパないプレッシャー?

 【6月21日】

 日本が初めてサッカーW杯に出場したのは1998年のフランス大会だった。W杯とは、他の大会と比べてどう違うのか。出たことがないのだから、それがどんなものか分からない。当時41歳で日本代表を率いた岡田武史は、大会前にジーコら身近な経験者に聞いて回ったという。そうしたら、異口同音にこう伝えられたそうだ。

 「W杯はメディアからのプレッシャーがまったく違う。あらゆるメディアがプレッシャーをかけてくる。そのプレッシャーから選手を守ってやらなきゃいけない」

 これを聞いたとき、僕はメディア側にいる者として何とも言い難い感情になった。伝える側に長く身を置く者は、自分が綴る言葉の影響力について鈍感になりがちである。もしかしたら、この原稿、この表現は、書かれる側にとって筆者の意図しない形で響くものかもしれない…。岡田の発言について立ち止まって考えさせられた。

 12年にサッカー担当に配属となり、ブラジルW杯の日本代表チームを取材した。アルベルト・ザッケローニ率いる代表チームで絶対的な存在だった本田圭佑は「ダメなときはどんどん叩いてくださいよ」とバッシング上等のスタンスだったけれど、まあ、これは彼ならではの物言いであり、ダメ出し歓迎の選手なんて、まずいない。

 メディアからのプレッシャーといえば、皆さん、ご存じでしょうか??競技を問わず、いわゆる番記者の数が日本で最も多いプロのクラブ(球団)ってどこだと思います??僕らの業界でよく言われることだけど、間違いなく阪神がダントツだろう、と。Jリーグでは浦和レッズの番記者が最多だけど、阪神はその比じゃない。ヤンキース時代の井川慶が「ニューヨークよりも甲子園のほうが断然、記者が多い」と証言したほど…もちろん巨人のそれをも圧倒する。おそらく、その数、世界一だ。

 そんなプレッシャーと戦う金本阪神は今年も苦しんでいる。交流戦が終了し、ここまで62試合、金本知憲への風当たりが強くなることもある。ここが節目だから、虎将にとって大・小の想定外を考えてみよう。いうまでもなく最大はウィリン・ロサリオ。ま、本当この人に尽きるんだけど、他にも数人…中でもあえて「大」を挙げるなら、やはり大山悠輔だと思う。

 球団の幹部らに聞いてもレギュラー奪取への期待値が高かっただけに、金本ら現場首脳の落胆の度合いは推して知るべし…だ。

 この交流戦期間中、面識のあるパ・リーグの面々と色んな話をした。印象的だったのは首位西武の打撃コーチ嶋重宣の話。「僕らはメディアからのプレッシャーとかないですからね。そりゃ、金本さんも、選手も大変でしょ?阪神で普通にやれる選手は、どの球団でも活躍できると思いますよ」。

 阪神メディアのプレッシャーがハンディであれ、それを跳ね返す大山のリスタートを楽しみにしたい。この夜のようにベンチ待機が続くようなら、環境を変えてリフレッシュ…なんて一手も将来の礎になるかもしれない。=敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス