「ガチガチ」と無縁のメンタル

 【6月17日】

 朝、コーヒーを飲みたくなってホテルから仙台駅まで歩いた。確か駅構内にスタバがあったよな…と思っていたら、まさかのリニューアル中。おいおい、もうラテの口になってたやん…。ま、缶コーヒーでもええかと売店へ向かうと「梨田辞任」を報じる新聞が並んでいた。63試合で借金20。第6代楽天監督の梨田昌孝はこの大不振にケジメをつけたわけだ。

 「1月に星野さんが亡くなられて…。それが絶対勝たなくてはいけないというプレッシャーになったのかな。チャンスで『おいしいぞ』と思って打席に入ればいいけど、金縛りのようにガチガチにさせてしまった。監督の責任です」

 これが引責の弁だという。他球団の内情は分からないし、無責任なことはいえないけれど、チャンスで個々がガチガチになったことが敗因なら、何とも複雑である。

 さて、虎が3タテを狙ったこの日だけど、早くも劇薬の効果なのか。一夜明けて「ガチガチ」がとけるとは思えないけれど、才木浩人は楽天打線の餌食になった。

 才木といえば…ご存じの読者も多いかもしれないが、能見篤史にカンシャである。須磨翔風高時代は「藤浪2世」と呼ばれ注目されたが、僕なんかは、阪神がよくぞ公立高の大器を追い掛けていたもんだと感心したわけで…。ところが後々よく聞けば、才木の「発掘者」は能見だったというのだ。

 「僕が教えに行った野球教室に中学時代の才木が参加してたんですよ。あの時点で背も相当大きかったですし、フォームもめちゃめちゃ綺麗でね。これはすごい子やな…と思って、一応、球団の方に言っておいたんです。将来楽しみなピッチャーがいましたよ、と」

 能見はクールにそう話していたが、これぞ一流の嗅覚である。だって、イマドキ背が高くて綺麗なフォームの中学生なんて珍しくない。能見はそれにプラスα、才木の素質にプロで通用する無類の何かを感じ取っていたのだと思う。

 まだ19歳。この日も楽天に相応の授業料を納めたと思えばいい。金本知憲やコーチ陣が絶賛するように素材は間違いない。結果はともかく、彼がプロで何年もメシを食える資質があるとすれば、それが「何か」を知りたい。春先だったか、金本から「あいつ、去年も自分が先発ローテに入るつもりでいたよ。自分から『行けます』って言ってたからな。超前向きな天然さがあるよ」と聞いたことがある。なるほど、才木にはガチガチとは無縁の「お化けメンタル」が備わっているのかもしれない。

 才能があっても「本領」の邪魔になるのが、マイナスのメンタリティ。いかに、ガチガチにならないでいられるか。どうすれば、余計な雑念とサヨナラできるのか。

 ちなみに、能見は自ら「別人格」に化ける術を覚え、マウンドではポーカーフェースを貫く。「僕の場合、AB型の特殊なものもあると思いますけど。客観的に自分を見るという…」。さて才木はどうか。化けなくても100%発揮できるなら、既に一流の条件を満たしているといえる。=敬称略=

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