虎の少年は大志を抱いてる!

 【6月12日】

 少年よ、大志を抱け…。ここへ来ると、なんとなくだけど、一度は口走ってしまう名言である。

 というわけで、やってきました北海道。タイガースと同便で新千歳空港に到着し、そのまま札幌ドームへ直行するチームバスを見送った。僕は小樽行きの快速列車に揺られ、ゆっくりと…なんてのんびり車窓の雨粒を眺めていると、ふと途中下車してみたい駅が…。

 いつ来ても札幌への道中で気になっていた町、北広島。ご存じの方も多いと思う。明治時代半ばに広島県から約100人が集団入植した町として、地名にその名が残っている。広島村→広島町を経て市制施行された96年に、あのカープの広島市との混同を避けるため北広島市となったそうだ。

 なぜ、立ち寄りたくなったかって?いや、僕も新聞記者なのでやっぱり気になるんですよねぇ。どこかプロ野球の球団に新しい風が吹くときは…。昨年大きく取り上げられたニュースなので、本紙の読者も関心が高いかもしれない。

 北広島市は日本ハムの新しいホームタウンになる予定だ。雨中、候補地の「きたひろしま総合公園」を散策してみたが、新ドームや商業施設を建設するには十分な敷地だと思う。空港からのアクセスもいいので道外からの来客増、選手の移動負担減も見込めるなど、いいことずくめ。開業予定は2023年という。そのときハンカチ王子は35歳になるけれど、清宮幸太郎は今の大谷翔平と同じ24歳のシーズン。彼が新ボールパークの象徴になっているかもしれない。

 そうだ、忘れてはいけない。日本ハムが移ってくるこの町といえば、ウィリアム・スミス・クラーク博士である。札幌農学校(現北海道大学)初代教頭を務めたクラークは8カ月間の勤務を終え、米国に帰国する前に北広島に立ち寄り、馬上から学生たちに言ったそうだ。「少年よ、大志を…」と。

 阪神の若い力は大志を抱いているのか…。「少年」といっちゃ失礼だけど、若手の伸び悩みが叫ばれて久しい虎だから、ダメなら、そこがクローズアップされてしまう。でもここだけの話、僕は…。

 全員100%とはいわないが、よくやってるやん…と思う。この夜のスタメン最年少、植田海はときに「物足りない」なんて言われるけれど、彼、実質1年目なんです。年俸は550万。打点0?確かに、物足りない。本人も好機で打ちたいだろう。でもね、開幕から1カ月後のスタメン定着で、11盗塁(セのトップは山田哲人の14盗塁)は立派。給料以上の仕事はしてるぞ…と、僕は嬉しくなる。

 クラークの名言はBoys be ambitious!で終わらない。正確にはその後にlike this old manが続く。君たち、大いなる志を抱くんだ!この年寄りのごとく…。糸原(25歳)、高山(25歳)、中谷(25歳)、陽川(26歳)、梅野(26歳)、植田(22歳)…スタメンに並んだ“少年”6人全員が安打を放った札幌の夜。大志尽きない老練メッセンジャーは彼らを頼もしそうに迎えていた。=敬称略=

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