結果にコミットする名参謀

 【6月9日】

 ダイエットのRIZAPといえばよくご存じだろう。結果にコミットする…そう、あのCMの会社だ。仕事で世話になるタレント松村邦洋がコミットされたので身近になったけれど、急成長を遂げた同社の実態はよく知らなかった。

 僕の参考書(紙)日本経済新聞によれば、創業者の瀬戸健(せと・たけし)は福留孝介よりも若い40歳。設立は星野阪神が優勝した03年というから新進気鋭である。

 瀬戸という人の実行力で目を引いたのは、この6月、菓子メーカー「カルビー」のCEO松本晃をRIZAPグループの最高執行責任者(COO)に招いたこと。瀬戸は松本と面会した際「我が社は○○が足りないのです」など改善点をすべてさらけ出したという。

 松本COOは70歳。親子ほど年の離れた「憧れの経営者」を三顧の礼で迎え、指南役を依頼した瀬戸にはつまり「私にダメ出しを」-の精神があるのだろう。巨大化と隣り合わせの脆さを自覚し「裸の王様」なる落とし穴に鉄蓋をする一手。「化学反応が楽しみ」という瀬戸イズムは、各分野で模範ケースになるかもしれない。

 リーダーといえば…プロ野球界のその者たちは、とかく孤独になりがちである。日々決戦に腐心しややもすれば周りが見えなくなることもあると聞く。そんなとき、素直に耳を傾けられる、厳しく指南される存在が傍らにあれば、彷徨わずに済むのかもしれない。

 「島ちゃんはいつもそばにいてくれた。よう怒られた。裏方さんに気配りし、私が焼きもちをやくほど、選手から好かれていた。名前も育夫。男を育てる男でした。こういう男は2度と出ない」

 これは07年、亡き島野育夫を偲んだ星野仙一の弔辞である。ご存じのように、阪神時代の闘将の傍らにはいつも名参謀がいた。忌憚なくダメ出しするヘッドコーチ島野の存在があったから、燃える男は「省みる心」を持てたのだ。

 早いもので星野が旅立って半年になる。なぜ、鬼の星野が今なお愛されるのか。なぜ、熱血語録が伝説のごとく伝わるのか。それは「勝った」からだ。仮にあの厳しさが歓喜に繋がっていなければ…さすがに、こうはいかない。

 能見篤史の99勝は喜ばしいけれど、モヤモヤの残るサヨナラゲームになった。R・ドリスの背信を責める気にはなれない。勝利へ向かうプロセスとしてやっちゃいけないもの…勝ちを素直に喜べないゲームはやはり筆が乗らない。

 最近、ふと考える。公私問わず金本知憲にとって島野のような存在は??たとえ傍目には分かりづらくとも、金本のココロにそんな人がいれば…と思うことがある。島野がそうであったように、場合によっては金本を「よう怒り」、また金本が全幅の信頼を寄せる指南役。いや、僕が知らないだけでそんな存在は前からあるのかもしれない。今度、聞いてみたい。

 この日の星を「勝ち運」で拾ったとすれば、野球の神様はまだ虎を見捨てていない。だからこそ、いまのうちに足りないものをさらけ出す必要がある。=敬称略=

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