外れるのは、カズ…から20年

 【5月31日】

 ロシアW杯のサッカー日本代表が、この日夕方4時過ぎに発表された。NHKが西野朗の会見を生中継-やはり、国民的行事を思わせる。土壇場のサプライズはあるのか。個人的にはそんな期待感を抱きながら見入ったが、メンバーは大方の予想通り。正直、これまでのW杯で最もワクワク感のない大会である。今のところは…。

 W杯のメンバー発表といえば…僕と同じように20年前のあのシーンを思い出す、いや、恨み節の消えない人はいまだ多いと思う。

 「外れるのは、市川、カズ…三浦カズ、北沢の3選手です」

 98年6月2日、日本代表の合宿地スイスでそう言い放った岡田武史は、三浦知良を思う全ての人を敵に回した(と、今でも思う)。

 小学生からサッカーを始めた僕は、当時、単身ブラジルで修練していた若き三浦に憧れた。そのカズが日本サッカーの顔、Jリーグの象徴となり、迎えた日本初出場のフランスW杯。カズに夢をのっけたサッカー人は、多かった。

 結局カズを外したW杯はどうだったか。皆、意外と忘れている。3戦全敗で予選敗退。新たにエースに指名された城彰二はノーゴールに終わり、帰国の成田空港で罵声とともに水をぶっかけられた。

 今思えば、岡田は日本サッカーの「顔」をカズから中田英寿、そして、城彰二に取って代えたかったわけだ。そのタイミングについて意見は分かれる。僕は今でもあのタイミングじゃなかったと信じているけれど、それは「カズ信者の目線」。歴史的な世代交代はいつか、誰かが決断しなければならないことは確かだし、岡田のそれを「英断」という人も当然いる。

 阪神の近くにいて思うこと…それは、このチームの顔について。今、誰が「阪神の顔」なのか。誰がこのチームの「象徴」なのか。昨年、タイガースを特集した雑誌Numberの編集者は表紙を誰にするか「悩みどころ」と話していたけれど、今年のDeNA特集は筒香嘉智で即決だったそうだ。

 ちなみに、僕が毎年買うベースボール・マガジン社の選手名鑑には各球団の「顔」(野手)が表紙に並び、今年の阪神は来月37歳を迎える鳥谷敬だった。ちなみに広島は丸(29歳)、巨人は坂本(29歳)、中日は京田(24歳)、DeNAは筒香(26歳)、ヤクルトは青木(36歳)。ソフトバンクはもちろん、柳田(29歳)である。

 僕が選ぶなら…存在感で福留孝介か鳥谷か。ただ、当人たちはそれを望まないだろうし、そもそも阪神が金本知憲を監督に招聘したのは、ややもすれば賛否分かれる新陳代謝を求めたからである。

 八回まで待たされた26イニングぶりのタイムリーは福留だった。猛虎党が望む新星の台頭。本来なら、この日昇格した北條史也こそその筆頭であるべきではないか。

 フランスW杯の直後、水を浴びた城はカズから電話をもらったという。「それが日本のエース(の宿命)だぞ。見返してやれ」-。

 よーいドンで3連敗。出てこい新たな象徴…日々そう願いながら縦じまを眺めている。=敬称略=

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