大和がいる…二遊間のベース寄り

 【3月6日】

 昨秋、某日のこと。悩み抜いた末にフリーエージェント(FA)権を行使した大和は、関西某所でDeNAベイスターズの幹部と交渉のテーブルについた。席上、同球団のGM高田繁はこんな口説き文句を用意していたという。

 「今シーズン、我々はヒット性の当たり、二遊間のベース寄りのところをあなたに何度アウトにされたことでしょうか。一本のヒットで1点を取るのも大事だけど、一つのプレーでセーフになる走者をアウトにする、失点を防ぐことがどれだけ重要なことか…。あなたはそれができる選手なんです」

 高田はそんなふうに語り、揺れる大和の心を大きく傾かせた。

 昨冬聞いた高田の言葉を思い出したのは阪神六回の攻撃である。大山悠輔のタイムリーで1点を返し、なお1死二、三塁。中谷将大が外寄りの直球をはじき返した打球は投手の左を抜ける。センターへ転がれば同点…そんな戦況だったが、ここで憎らしいフィールディングが甲子園球場を沸かせた。

 「二遊間のベース寄りのところ」を難なくさばいた大和は体を反転させて一塁へ。好守に見せない好守…バットに当たる瞬間の、あの一歩目こそ名手たる所以だ。本紙カメラマンに六回の守備を掲載するようリクエストしたのだが、打球が抜けると思って大和を撮れなかったそうだ。中谷の悔しそうな顔が全て。この回、DeNAは後続を絶って試合をものにした。

 確かに両軍ともベストメンバーではないし、テストマッチの用兵だった。でも、どうだろう。プレシーズンとはいえ金本知憲、アレックス・ラミレスともに、この2連戦を強く意識していると思う。

 これは僕の独断だけれど、阪神が優勝するために実は大きなキーになるのがDeNA戦。分かりやすく、敵陣の立場に立ってみる。

 昨季の数字を振り返れば、DeNAから見た対阪神戦は10勝14敗(1分け)で4つの負け越し。ちなみにレギュラーシーズンは虎が78勝で2位、ベイは73勝で3位。勝ち星の差は5つだった。セ・リーグで唯一カープに勝ち越したDeNAが仮に虎との戦績を逆にできればどうなるのか。リーグ制覇を「最大目標」に掲げるラミレスは必ず虎を食いにかかってくる。

 そこで大和の存在価値である。

 金本とラミレスがともに監督に就任した16年から2シーズンの守備、チーム失策数を調べると…。

 97+82=179…阪神

 73+66=139…DeNA 

 上が16年で下が17年。2年間で阪神より40個エラーの少ないDeNAだが、実はこの両軍、直接対決では失策数が逆転する。例えば昨季、虎はDeNA戦で15失策、逆にDeNAは同カードで19失策…。本拠地が天然芝と人工芝で単純比較はできない。が、前述のように高田が大和を欲した根拠はこんな数字からも分かる気がする。

 「大和は(打率)2割5分で十分」。高田からそうも聞いた。この日、阪神は10安打で3得点。DeNAは5安打で5得点。失策は両軍とも0。好守の数は…記録に記されることはない。=敬称略=

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